暮れゆく長崎2020 コロナで混乱 生活激変 「新たな様式」模索続く

2020/12/31 [12:12] 公開

「迎春」との懸垂幕を掲げた浜市アーケードで、マスク姿で行き交う市民ら。新型コロナウイルスに翻弄(ほんろう)された2020年が暮れようとしている=30日午前11時17分、長崎市浜町

 1年前、こんな世を誰が想像しえただろう。56年ぶりの東京五輪に沸き、長崎市でも被爆75年記念の「長崎平和マラソン」を開くはずだった。政治、経済、文化、社会、生活-。新型コロナウイルスは世界中のありとあらゆるものに混乱をもたらし、変化を迫った。

 4月、感染拡大に伴い緊急事態宣言が全国に発令された。県内でも学校が一斉休校し、事業者は県の協力要請で休業や営業時間短縮に踏み切った。長崎くんちの奉納踊りなど行事・イベントが相次いで中止や延期に。クラスター(感染者集団)が、長崎に寄港したクルーズ船内をはじめ、病院や飲食店でも発生した。感染者や医療従事者への差別、偏見が問題となった。市民は品薄のマスクを探し求め、帰省を自粛。リモート(遠隔)やテークアウトが「新たな生活様式」となった。
 そんな状況でも自然災害は容赦なく起きる。大村市では7月、現地観測史上最大の1時間94.5ミリの降雨を記録し、川が氾濫。3密(密閉、密集、密接)回避のため避難所の定員を絞らざるを得ず、あぶれた市民は他を探した。
 スポーツも制約を受け、県高総体は史上初めて中止された。一方、サッカーJ2のV・ファーレン長崎はJ1昇格争いで一歩及ばず3位。V長崎に続くプロクラブとしてバスケットの「長崎ヴェルカ」が発足。来季のBリーグ3部参入を目指している。
 九州新幹線長崎ルートの全線フル規格化を巡る国と佐賀県との交渉は難航したままだが、暫定開業は2022年秋と明示された。先行して長崎駅は3月、150メートル西側に新築移転し、在来線が高架化した。経済界では十八銀行と親和銀行の県内トップ2行が10月に合併し「十八親和銀行」が誕生した。
 被爆75年の節目に被爆者の念願がかなった。10月、核兵器禁止条約の批准が50カ国・地域に達し、来年1月に発効する。だが「核の傘」に頼る日本は不参加の姿勢を崩していない。
 7年以上続いた安倍晋三政権は菅義偉政権に代わり、トランプ米大統領の退任が確実となった。予想だにしない激動の令和2年がきょうで幕を閉じる。これから国内でもワクチン接種が始まる見通しで、1年延期された五輪の行方が注目される。ウィズコロナの模索が続く。