ごう音、風圧… ヘリ報道 救出作業に支障 警察・消防「二次災害の恐れ」

2020/08/23 [11:00] 公開

母子3人の救出に向かう警察官や消防隊員ら=7月25日、諫早市高来町の轟峡

 長崎県諫早市高来町の轟峡の遊歩道崩落が発生した7月25日夕、標高200メートル超の現場上空を複数の報道機関のヘリが旋回しながら取材した。母子3人の救助作業にあたった諫早署と県央消防本部は、「ヘリのごう音や風圧で救出作業に支障があり、二次災害の恐れがあった」と問題点を指摘する。
 現場は車両が入ることができる幅の道がなく、署と機動隊計約50人、消防本部約30人は徒歩で向かった。消防本部によると、母子3人の上に直径1メートル程度の落石や倒木、土砂が重なり、スコップやチェーンソーを使い救助を進めた。
 署は「上空からの撮影は、被災者の姿をカメラにさらす可能性があり、通常より気を使って救出せざるを得なかった」と被災者のプライバシーを懸念。さらに二次災害の危険性も指摘する。ヘリ飛行時、ローター(回転翼)が下方へ風を作り出す「ダウンウォッシュ」が発生し、木や石が動く可能性があったという。
 「災害現場では10~20秒のサイレントタイムをつくり、さまざまな音に耳を澄ませるが、ヘリの音でできなかった」(消防本部)。土砂の下から人が発する声や音をはじめ、落石などの異常を伝える監視員の声が隊員に聞こえない恐れがある。「一刻一秒を争う現場で、安全に早く助けたい。ヘリが接近しないよう、報道機関への連絡先も分からずに困った」
 報道の自由や速報性が、救出現場の安全を損なう事態は避けなければいけない。ヘリ取材の在り方に再考が求められる。