未来を“デザイン”しよう 塾「学習アトリエCOR」

2020/08/01 [15:00] 公開

牛津代表(左)と新型コロナウイルスに関する「未来ディスカッション」に取り組む生徒=長崎市、学習アトリエCOR

 長崎市矢上町の学習塾「学習アトリエCOR(コー)」(牛津理美代表)は児童、生徒を対象に、考える力を鍛え、心と個性を育てることを重視した指導を実践している。「成績が良くても、自分の利益だけを追求し、相手の立場や気持ちが分からない大人になっていいのか」という問いを原点に、子どもが学習を通して、自らの未来を“デザイン”する力を身に付けることを目指している。

◆ 「意欲湧く」
 7月上旬の夜、同塾の教室。3人の男子高校生に、牛津代表(42)が「新型コロナウイルスについて知っていることを言ってください」と問い掛けた。ちゅうちょしながら「中国を中心に世界に広がり、日本や長崎でも流行した」と答える生徒。「1年後はどうなっていると思いますか?」という次の質問には「ワクチンが開発されないと、1年後も今の状況が続くかも」。初めは気恥ずかしそうだった生徒たちが、徐々にいろんな答えを返し始めた。
 政治や経済、教育など社会の状況を分析し、未来がどう変わるかを自分なりに予測する「未来ディスカッション」という訓練。参加した青雲高3年の入江元太さん(18)は「とても刺激的。互いの意見やアイデアを比べ合うことで、学ぶ意欲が湧いてくる」と話した。

◆ 大人の責任
 牛津代表は元家庭教師。以前、受け持っていた高校生が通う学校で、別の生徒が自殺する事件があった。「勉強だけでいいのか。教える大人にも責任があるのではないか」と悩んだという。学校の成績を上げ志望校に進学させるだけでなく、「子どもたちが楽しめる学習の場をつくり、生きる力を育てたい」と思い立ち、2017年に同塾を開設した。
 牛津代表ら3人が講師を務め、現在は小学生から高校生の計約30人が通っている。英会話や主要教科を指導し学力アップを図る一方、未来ディスカッションなどのユニークな指導を導入。講師と生徒や生徒同士のコミュニケーションの機会を増やし、楽しみながら学べる場を目指している。
 学習塾では珍しい科目の一つが、小学生対象の理科の実験。試験管を使って酸性やアルカリ性の中和などを調べたり、モーターや簡単なロボットを組み立てたりして、学ぶ楽しさに触れてもらう狙いだ。

◆ 自立を促す
 このほか、数学、社会などを英語で教える教育方法「CLIL(クリル)」を取り入れている。さらに、「進学して何をしたいのか」「社会に出てどうなりたいのか」などを早いうちからイメージしてもらおうと、大学で実際に講義を受けたり、実験をしたりする“課外授業”も実施。
 個人事業主や中小企業の経営相談などに当たる「県よろず支援拠点」で、同塾を担当するサブチーフコーディネーター、松村秀史さん(50)は「子どもたちの自立を促す取り組みを複合的に実践しており、とてもユニーク」と評価する。
 牛津代表は「偏差値の高い学校に入ることがゴールではない。長崎から1人でも多く、生きる力を持った国際人を誕生させたい」と力を込める。

 問い合わせは学習アトリエCOR(電080.9247.2921)。

◎CLIL(クリル)とは
 「Content and Language Integrated Learning」の略。数学(算数)や理科、社会、音楽、体育といった教科を、英語などの外国語で学ぶ教育方法の総称。各科目の学習と外国語の学習を兼ねており、「内容言語統合型学習」とも呼ばれる。同時に思考力やコミュニケーション能力などを高める効果もあるとされる。

理科の実験を楽しむ小学生=学習アトリエCOR(同アトリエ提供)