三菱重工、地元自治会に説明 乗組員の行動歴「一刻も早く伝えたい」

2020/04/26 [11:00] 公開

住民の質問に答える長崎造船所の蜂谷所長代理(中央)=長崎市末石町、市南部市民センター

 長崎市香焼町の三菱重工業長崎造船所香焼工場に停泊中のクルーズ船コスタ・アトランチカ船内で新型コロナウイルスの集団感染が発生した問題で、長崎造船所の蜂谷靜夫所長代理は25日、市が周辺自治会役員向けに市内で開いた説明会に同席した。県の自粛要請後も乗下船していた乗組員の行動歴を「一刻も早く市民に伝えたい」と強調した。
 蜂谷氏は冒頭「住民の皆さまにご心配をかけ深くおわび申し上げる」と陳謝した。
 三菱側は乗組員の乗下船が続いていた背景を説明。それによると、県が3月6日、日本側船舶代理店を通じて船の運行会社コスタクルーズ(イタリア)に行動範囲を岸壁やターミナルに限るよう要請。係留先の三菱にも参考情報として伝えた。
 これを受け三菱がコスタ社に確実な履行を求めると「14日以降は乗下船を禁止する」と報告を受けた。ところがコスタ社は乗組員の帰国や日用品の買い出し、体調不良時の通院は自粛対象にならないと受け止めており、両社に理解の相違があったという。
 説明会には香焼、深堀、三和など各地区の連合自治会長や市議ら約15人が参加した。市側は田上富久市長も出席した。
 蜂谷氏は、コスタ社に対し乗下船の実績報告を「強く要請している」とし、情報の照合は詰めの段階にあると報告。「乗組員を工場周辺で見かけた」と不安視する住民の指摘に対しては、香焼工場に約150人の外国人実習生が勤務し周辺に住んでいるとして理解を求めた。
 「市南部の人たちの不安感は高まっており、三菱の信頼が揺らいでいる」と参加者に指摘されると、「地域の皆さまあってこそ」と応え、信頼回復に努めると強調した。参加者からは「『香焼の子は(登園の)自粛を』という保育所もある」「客足が止まった店もある」などと風評被害が出ているとして、市に実態調査と対策を求める声も上がった。
 香焼町連合自治会の浜崎孝教会長は終了後の取材に「地域に乗組員の下船がなかったという確実な情報が早くほしい。住民の不安を解消するため、三菱には各地で説明の機会を設けてもらいたい」と話した。