問答不在

2020/01/31 [09:58] 公開

 改革には何が必要? そう聞かれて、英国の故サッチャー元首相は答えた。「政権交代が可能な、よい野党の存在です」。変革とは、与野党の間に緊張感が保たれ、息詰まる問答が交わされることで生まれる。そういう意味だろうか▲いまの日本の国会を見れば、「桜を見る会」をはじめ政権側の不祥事を野党が責め立てても、安倍晋三首相に背筋を伸ばす様子はうかがえない。問答不在が続いている▲「桜を見る会」の私物化疑惑で、招待された人の名簿を廃棄したのを首相は「適切」と言い、名簿があるかないか再確認を求められても応じない。「見る会」の参加を「募ったが募集していない」と意味不明なことまで言い出して、議場は騒然とした▲首相は問答無用の姿勢を保ち、野党は追及をかわされる。例えば、招待者名簿の類いがたやすく捨てられてよいものなのか、公文書の管理はどうあるべきか。野党も「追及」の一手ではなく、議論の構えを見せなければ何も改まらない▲先ごろ、立憲民主党と国民民主党の合流が見送られた。一つになろうとすれば違いが浮き立ち、また距離を置く。長いこと野党はまとまらずにいる▲サッチャー氏の言う「よい野党」は不在で、政権側はおざなり答弁の腕前を上げる。言論の府に言論がなければ、後に何が残るのだろう。(徹)