<長崎県議会を振り返って> 新幹線 佐賀との溝浮き彫り

2019/12/21 [09:50] 公開

 九州新幹線長崎ルートで未着工となっている新鳥栖-武雄温泉(佐賀県)の整備方式を巡り、長崎、佐賀両県の主張が対立する中、並行在来線(肥前山口-諫早)の維持管理費が新たな火種となり、県議会での両県知事の発言が注目を集めた。
 並行在来線の区間は両県が鉄道施設を維持管理し、JR九州が運行を担う「上下分離方式」を採用する。負担割合は「佐賀県3分の1、長崎県3分の2」とすることで合意していたが、両県とJR九州による協議では、当初想定の3倍以上の年間8億5千万円程度(管理のため両県が設立する一般社団法人の運営費含む)に膨れ上がる見通しという。
 新鳥栖-武雄温泉の整備方式を巡っては、フル規格を求める長崎県側と、フル規格前提での協議に反発する佐賀県側との溝が埋まらない。こうした中、並行在来線の維持管理費が両県の新たな懸案として浮上した形だ。
 3日の長崎県議会一般質問で中村法道知事は、人件費や資材の高騰に加え、維持管理のレベルがJRの基準に上がり、線路や信号機を24時間監視する業務や新法人の運営費用が新たに必要になったと説明。「(負担割合について)新たな合意を図っていくための協議が必要」と述べた。この発言を受け、佐賀県の山口祥義知事は4日の同県議会一般質問で「今までの合意はどうなるのか。意味が分からない」と反論し、両県の溝の深さを象徴する一場面となった。
 11日の山口知事と赤羽一嘉国土交通相との会談では、新鳥栖-武雄温泉の整備問題に関し、国と佐賀県との今後の協議の在り方を事務レベルで確認することで一致。佐賀県側の反発を踏まえ、国交省は同区間をフル規格で整備する際に必要な環境影響評価(アセスメント)費の2020年度政府予算案への計上を見送った。同省は佐賀県の了解を得られた場合は速やかに予算化する方針だが、来年度の計上を求めていた長崎県にとっては大きな痛手だ。
 フル規格を求める長崎県と、ミニ新幹線やフリーゲージトレイン(軌間可変電車)などを含めた5択での協議を求める佐賀県。協議のテーブルについてもらう落としどころとして、長崎県も佐賀県が言う5択からの話し合いを受け入れるぐらいの譲歩があってもいいのではないか。「フル規格をお願いする」というスタンスは変わらないとしても、押して駄目なら引いてみるぐらいの駆け引きがもっと必要に思う。