放置自転車に再び輝きを 長崎大「Re:ちゃいくる」 自分たちで整備、格安販売

2019/05/30 [09:56] 公開

作業場で工具などを使って自転車を整備するメンバー=長崎大文教キャンパス

 「この状態ならまだ乗れるね」-。長崎大文教キャンパス(長崎県長崎市文教町)の敷地内に設けた作業場で、さびた自転車を囲む学生ら。手にした金属製のブラシでフレームをゴシゴシ磨くと、痛んでいた車体は少しずつ輝きを取り戻していった。

 学生らは同大の学生団体「Re:ちゃいくる」のメンバー(8人)。学内の駐輪場などに乗り捨てられた自転車を修理・整備して、学生や市民らに格安で販売するリサイクル活動に取り組んでいる。

 同大では、学生が通学用の自転車を卒業などを機に学内に放置するケースが後を絶たないという。同大によると、年間約250台は持ち主が現れず半年以上放置されていて、年に1度、大学職員が回収、廃棄している。しかし、学内に約10カ所ある駐輪場は放置自転車に常時圧迫され、利用者が自転車を止めにくいだけでなく、雨風にさらされて朽ち果てた自転車が学内の景観も損ねている。

 こうした状況を見かねた一部の学生有志が2018年3月、同団体を発足。大学側が回収した自転車で状態の良いものを引き取り、修理・整備して販売することにした。同年、学生の社会貢献活動などを同大が支援する「夢への架橋」チャレンジ・プロジェクトに採択され、交換用の部品などを購入するための補助を受けられるようになった。

 メンバーは空いた時間に作業場に集まり、工具などを使って故障箇所を修理。ギアやタイヤなど部品を交換するほか、さびや汚れを落として、乗れる状態に整備している。駐輪場を回り、放置自転車の状態を確認して引き取る車両の目星を付けたりもする。徳久泰河(たいが)代表(20)=工学部3年=は「パンク修理などは比較的簡単だが、さびを落とす作業が大変」と語る。

 同年7月には文教キャンパス内で、整備を終えた自転車の販売会を実施。1台5千円で13台を出品すると、留学生らに好評ですぐに売り切れた。今年3月にも同様に約10台を出品し7台が売れたという。同団体は4月末までに約50台の自転車を再生。広報担当の酒井統和(とわ)さん(20)=水産学部3年=は「捨てられるはずの自転車が誰かに乗ってもらうことで生まれ変わるのがうれしい」と話す。

 次回の販売会は9月に文教キャンパス内で開く予定。

長崎大文教キャンパス内の駐輪場で放置自転車の状態を確認するメンバー