ハウステンボスの原動力 「HTBのプレゼンター」

2019/04/04 [00:07] 公開

カートタクシーを操り「園内の楽しみ方を伝えたい」と笑顔で語る手塚さん=ハウステンボス

 長崎県佐世保市の巨大テーマパークHTB。裏方として働くスタッフ5人の仕事の美学に迫った。

 クラクション代わりのベルを鳴らし、さっそうと駆け抜ける。手塚正徳(55)はハウステンボス(HTB)で来場者の“足”になる。
 「左ハンドルで外車のふりをしていますが、実は国産車なんです」。案内の合間には、得意のジョークを織り交ぜる。「目的地までに3回笑わせる」。自らにノルマを課した。関西の観光客からは「大阪人見つけたで」とちゃかされる。「大阪には住んだこともないですわ」。また笑いが生まれる。
 広い園内のどこに行ったらいいのか分からない来場者は意外と多い。アトラクションや施設に目移りするのだろう。だからこそ、楽しみ方を教えたい。ただ客を目的地に運ぶのではない。「HTBのプレゼンター」を自負している。
 何げない会話から、乗客の表情の微妙な変化を見逃さない。「心の声」に耳を澄ませる。押し付けがましくならないよう、何を求めているのかを見抜いて、興味がありそうな場所に運ぶ。ジョークを織り交ぜるのも、会話しやすい雰囲気づくりのためだ。
 いつも園内を見て回り、情報収集を欠かさない。季節感やイベント内容といった変化に敏感になった。愛車の床は丁寧にぞうきんがけをする。きれいに保つようにしてから乗客は増えた。
 2010年8月に入社する前は佐世保バーガーの職人だった。HTBに出店した際、「帰りたくない」と思ってしまうほど、居心地がよかった。引かれたのは街並みの美しさばかりではない。「自分がいないといけない場所だ」と直感。すぐに入社を決めた。
 「来場者と感動を共有できることがうれしい」。新たな笑顔が生まれることを期待して、今日も風を切る。