虐待に手を差し伸べる

2019/03/30 [10:08] 公開

 昨年6月と今年1月、親の暴力などで虐待死した子どもが残していた悲痛な言葉は、私たちの胸を締め付けた▲5歳の船戸結愛(ゆあ)ちゃんが両親にメモで訴えた「もうおねがい ゆるして ゆるしてください」。10歳の栗原心愛(みあ)さんが学校のアンケートに記した「お父さんにぼう力を受けています。先生、どうにかできませんか」。ここまで追い詰められていた▲家庭という密室でなされ、しつけという言葉で正当化されやすい虐待の深刻さをまざまざと見せつけられた。政府は2人のほかにも切迫した事態に置かれた子がいるのではないかと、児童虐待の緊急安全確認を実施した▲2月1~14日の間に一度も登校していない児童生徒に学校関係者が直接会って安否を確かめたところ、欠席の事情が把握できず虐待の可能性が否定できない子どもが1万2545人に上った▲親に見守られ成長していく年頃の子どもが、親に頼るどころか、親のせいでつらい思いをしているとしたら。痛ましい気持ちになる。暴力を受けたり育児放棄されたりしているのに誰からも助けてもらえなければ、身近な人を誰も信じられなくなってしまうのではないか▲大人を、そして私たちが生きる社会を、信頼してほしい。そう言うためにも、虐待を受けている子には手を差し伸べなければならない。(泉)