抜け道で交通整理10年 時津の山田渉さん

2019/03/12 [00:04] 公開

 平日の朝、長崎県西彼時津町元村郷の住宅地を抜ける町道の狭いカーブに立ち、車の交通整理を約10年間続けている人がいる。同町日並郷の病院職員、山田渉さん(70)。トレードマークの黄色いうちわを使って、両側から向かってくる車に笑顔で合図を送る。
 山田さんが立つのは、自らの始業前の午前8時から30分間。道路は地元住民の生活道路だが、時津-長与間の抜け道として使う車も多い。道幅は約3メートルで車の離合がしにくく、カーブミラーも直前まで相手の姿をとらえにくいため、見通しが悪く“鉢合わせ”することも少なくない。山田さんは、夏も冬も雨の日もうちわを持ち「止まって」「どうぞ」と誘導し、不安なドライバーに安心感を与えている。
 交通整理のきっかけは、2007年に当時、山田さんが事務長として勤務していた病院が長崎市内から移転。職員が道路を使うようになったが「慣れない人は離合が大変。事故やトラブルが防げるかもしれない」と翌年から始めたという。
 町道を通るほとんどの車が、頭を下げたり手を挙げたりしてお礼の気持ちを表していくという。時津町元村郷の会社員、林田洋二さん(49)は「朝夕の交通量が増えているので立ってくれる人がいるだけで助かる」と感謝する。
 山田さんは「皆さん協力的で止まってくれる。窓から『ごくろうさん』と声を掛けてくれる人もいて、思いやりの心がうれしい」と話す。さらに「困っている人がいると思うとやめられない。続けられる間は続けたい」と張り切っている。

「おはようございます」。通る車にあいさつしながら交通整理をする山田さん=時津町元村郷