イスラエルのガザ攻撃 核使用リスクに危機感 長崎・平和宣言起草委が初会合

2024/05/04 [12:21] 公開

今年の平和宣言の内容について意見を交わす起草委員ら=長崎市平野町、長崎原爆資料館

 長崎市の鈴木史朗市長が長崎原爆の日(8月9日)の平和祈念式典で読み上げる平和宣言文の起草委員会は3日、市内で初会合を開いた。2年以上続くロシアのウクライナ侵攻に加え、イスラエルが昨秋から続けるパレスチナ自治区ガザへの攻撃と核兵器使用のリスクに対し、委員の大半が一層の危機感を表明。人道主義に基づく反核・反戦の訴えを盛り込むよう求める意見が相次いだ。
 委員は被爆者や有識者、大学生ら15人。委員長の鈴木市長は「核兵器のない世界への道のりが険しさを増している。核の脅威に終止符を打つため、核兵器使用の結末を国内外に伝え『長崎を最後の被爆地に』と力強く訴えることがますます重要だ」と述べた。
 核保有国イスラエルのガザ攻撃について、長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA=レクナ)教授の吉田文彦委員は「被爆地長崎として非人道的行為を見過ごせない。一刻も早い停戦と和平を求める表現を」と要望。活水中・高講師の草野十四朗委員は「泥沼の報復合戦。連鎖を食い止め、被爆者が訴えてきた『ノー・モア・ナガサキ』の精神を今こそ国際社会と共有したい」と語った。
 米国の原爆開発者の伝記映画「オッペンハイマー」が世界的な話題となったことに複数の委員が言及。被爆者で医師の朝長万左男委員は、非人道的な核兵器の廃絶の重要性を強調する作品だとして「米国が核兵器を造り実戦に使った史実が『核時代』を今に持続させている。米国民と米政府の責任を感じさせる映画で、(宣言で)取り上げた方がいい」と提案した。
 被爆79年目を迎え、被爆者の高齢化や減少が進む。レクナ准教授の中村桂子委員は、「被爆者なき時代」とは単に存命の被爆者がいないことではなく「被爆者の思想や行動が、全ての人々の心から消えること」と説明。一方、戦後も苦しみながら核兵器廃絶を訴える被爆者の「生きざま」が国際社会を動かしたとして、「被爆者の思想や行動に今一度立ち返り、全人類の記憶として普遍化する取り組みが不可欠」と指摘した。
 今年で没後50年を迎えた長崎の被爆詩人、故福田須磨子さんの作品や、原水爆禁止運動の発端で今年70周年を迎えた米国のビキニ水爆実験について、宣言で触れるよう求める声も。首相との面会が検討されている「被爆体験者」の救済を強調する意見も相次いだ。
 市は6月の次回会合で素案を示し、7月末にも骨子を公表する。