米軍向け賃貸住宅が人気 “基地の町”佐世保の不動産事情

2024/04/27 [11:45] 公開

 長崎県佐世保市船越町の海岸沿いに、洋風の一戸建てが立ち並ぶ住宅街があり、異国情緒が漂っている。調べてみると、そこは米海軍向けの賃貸住宅。“基地の町”とも呼ばれる佐世保には米軍向け住宅という地域特有の不動産事情があった。ここ4、5年で「需要が高まっている」といい、既に満室の物件も。不動産に投資する人からの人気も増えているという。

洋風建築の戸建てが並ぶ米軍向け住宅街=佐世保市船越町(画像は一部加工しています)

■利益大きい利点
 住宅街の入り口には「アメリカンヴィレッジ」の看板。約30戸あり、不動産業などに取り組むL&S(同市)が手がけている。代表取締役の佐々木茂彦さん(64)は、米海軍佐世保基地で勤務する米国人には、子育て世帯も多く「家族も喜ぶ住宅を造れば、ビジネスモデルになるのでは」と考え、7年ほど前から市内各地で宅地開発を始めた。
 駐車場は乗用車2台以上が置ける広さ。日本の湿気対策として、米国の断熱材を直輸入した。「米軍の方が喜ぶということは、投資家の安心にもつながる」(佐々木さん)。投資家や米軍関係者の人気が高まり、建設前から投資家から連絡が入ったり、佐世保基地に赴任予定の米軍関係者が、本国から予約したりする事例もあるという。
 「単身者の軍関係者向けにはマンションも人気ですね」。管理する森塚不動産(同市)の森塚一郎代表取締役は手応えを語る。俵町にあるマンションの間取りは1LDKと2LDK。エレベーターの張り紙などは全て英語。マンションを持つ人が米軍向け住宅にリフォームしたり、新たに建設したりするという。日本人向け賃貸よりも、米軍向けの方が「家賃が高いため、その分利益が大きい利点もある」。

森塚不動産が管理する米軍向けマンション。米国人の体格に合わせ、キッチンやドアは大きめにしている=佐世保市

■基地に近い立地
 取材した米軍向け住宅に共通するのは、日米の文化や体格の違いに応じたつくり。日本の住宅は狭く感じる場合もあり、ドアを一回り大きくしたり、天井やキッチンを高くしたりしている。米軍側が準備している住宅地には、街中から遠い場所もあり、不満の一つになっているという声も。基地から車で近い場所を選んでいるという。佐世保では、海が見える場所や基地に近い立地が人気という。
 ただ日本と米国との生活文化の違いから、特有の問題もある。マンションのベランダでバーベキューなどをして「付近住民から騒音などに対する不満もあった」(森塚さん)。
 需要が高い米軍向け住宅だが、建設への課題も。米軍側の施策で佐世保に居住する軍人・軍属が減れば、日本人への賃貸を考えなければならない。市街地から離れた場所では、公共交通機関が無いなどの理由で日本人に貸しづらいという。
 森塚さんは米軍関係者の増加を望む。「佐世保で米軍のトラブルは少ない。交流人口が増えると、地元に落ちるお金も増えるのではないか」と期待を込める。