こどもセンター整備に苦慮 児童館閉館で市民は後継望むも…施設削減と板挟み 長崎・島原市

2024/04/21 [11:30] 公開

3月末で閉館した島原市児童館で遊ぶ親子連れ=3月2日、島原市

 18歳以下の子どもだけでなく、保護者らも利用していた長崎県の島原市児童館(白土桃山2丁目)が3月末で閉館した。市民からは後継施設の整備を望む声も上がる。市は、児童館の機能を一部受け継ぐ「こども家庭センター」の整備を検討しているが、公共施設削減を目指す計画と板挟みになり、対応に苦慮している。

■一体的
 市などによると、児童館(延べ床面積約200平方メートル)は1964年に設置された児童厚生施設。保護者や地域の交流、集会の場としても使われた。2023年度の利用者は約7千人。市は老朽化を理由に閉館を決めた。
 児童館の子育て機能を受け継ぐ施設としても期待されるのが「こども家庭センター」だ。これまで別々の施設が担っていた「母子保健」と「児童福祉」の機能を統合。母子の支援や虐待防止などを一体的に担い、自治体の子育て拠点となる。
 国は、こども家庭センターの設置を市町村の努力義務とした。26年度までに設置しなければ27年度以降、母子保健と児童福祉の両機能の運営に対する国庫補助がなくなる。
 島原市に対する23年度の両機能を合わせた補助金は約500万円。一方、センターを設置すれば補助金は拡充され、本年度分では約1800万円を受けられる計算になる。
 古川隆三郎市長は3月30日、児童館閉館のセレモニーであいさつし「妊娠・出産・子育てだけでなく、いじめや虐待、ネグレクト(育児放棄)も含めた総合的な児童福祉が求められている。市もセンターを設置すべく検討している」と述べた。

■二の足
 ただ、整備に立ちふさがるのが市の公共施設削減の計画だ。
 市は17年に「公共施設等総合管理計画」を策定。公共施設の延べ床面積を10年間で10%(約2万4千平方メートル)削減する方針を打ち出した。
 市の場合、母子保健は市保健センター(霊南2丁目)、児童福祉は市家庭児童相談室(市役所本庁こども課内)が担っている。
 市は3月の市議会で、こども家庭センターの設置場所について、保健センターは手狭で転用は難しいと説明。公民館などの空き部屋も長期使用はできないとの見解を示した。だが、施設削減計画との兼ね合いで、こども家庭センターの新築には二の足を踏んでいるのが現状だ。

■選択肢
 こども家庭センターは、民間の賃貸施設に入る選択肢もある。そうすれば公共施設の面積には入らなくなるが、市によると、センターは市有施設でなければ国庫補助の対象から外れてしまうという。
 島原市緑町の元保険外交員、松坂和子さん(76)は東京都出身。島原で3人の子どもを育て上げた。50年前の子育て期には児童館を利用。児童館の閉館セレモニーにも出席した。
 松坂さんは「他地域の出身者や共働きの親は特に孤立しやすい。児童館のおかげで乗り越えることができた。閉館は寂しいが、アーケードの空き店舗などに後継施設ができれば、地域が活性化し利便性も高まるはず」と提案した。
 市は「場所は未定だが、こども家庭センターを26年度までに開設できるよう検討を進めたい」としている。