反撃

2024/04/20 [09:39] 公開

 それ以上の説明を放棄してしまったようにも見える。「報復」を手元の辞書で引いてみたら〈「仕返し」の漢語的表現〉と、とても簡潔な語義の説明があった。漢字で書いてみただけ▲「だって、あの子が先に」「でも、最後にぶったのは相手の方」…それを難しく言ったら「報復の連鎖」になるという理屈だ。無論、国家同士の衝突をこんなに単純に図式化するわけにはいかない。遠い国の私たちには理解の及ばぬ事情や深い遺恨が衝突の背景に横たわっている▲しかし、これは仕返しだから-と「報復」の名の下に「攻撃」が正当化されるとしたら戦闘がいつまでも終わらないことは、ひょっとしたら幼児にも分かってもらえるかもしれない▲「シリアにあるイラン公館に対する攻撃への報復」としてイスラエルを攻撃したイランにイスラエルが反撃した。攻撃は限定的とされる。だがこの先は見えない▲きょうも、あしたも、外信面から戦争のニュースが消えない。ある日突然、世界の何かが劇的に好転することはあるまい。それでも、この状況に慣れてはいけない、と自戒することを忘れずにいたい▲昨日は汗ばみそうな陽気で遠くの景色が黄砂でぼんやりかすんで見えた。そののどかな春空は、ずっと向こうでミサイルや無人機の飛ぶ空につながっている。(智)