佐々駅舎交流センター テナントが2年埋まらず 見通し甘く、指定管理を断念 長崎

2024/04/19 [12:00] 公開

改装してもなお、約2年間テナントが埋まらず“空き店舗状態”が続いている佐々駅舎交流センター=北松佐々町本田原免

 長崎県北松佐々町が、佐々駅舎交流センターを改装して約2年。施設内にテナントのスペースを設けたが“空き店舗”の状態が続いている。センターの運営についても指定管理者制度を導入予定だったが、こちらも決まらないまま。手詰まりの状況を打開できず、町は見通しの甘さを認め、3月の町議会定例会で指定管理を前提にしていた条例を廃止した。
 佐々駅舎交流センターは2022年3月、町が松浦鉄道(MR)の佐々駅をリニューアルし、1階にテナント用のスペースを設けた。観光情報の機能を一体化し、交流人口拡大などにつなげる狙いで、約800メートル離れた場所にあった「町観光情報センター」を移転・併設。指定管理者制度を導入し、イベントの開催や観光商品の開発なども担ってもらう考えだった。改装費用の一部には国の地方創生推進交付金事業を活用した。
 移転・併設の背景の一つには、公共交通機関の切符販売があった。移転・併設前の観光情報センターでは、町観光協会が西肥自動車から受諾して、バスの乗車券を販売。町が人件費として年間約160万円を支出していた。
 町は、改装した交流センターの指定管理者に町観光協会を予定。バス乗車券に加え、駅でMRが販売していた列車の切符販売業務も行う計画を立てた。指定管理者に販売を任せれば、町が支出していた人件費は必要なくなる。西肥自動車、MRからの販売手数料と賃料月8万4千円のテナント収入などがあれば指定管理者の運営も問題ないと考えていた。
 ところが、町議から人員配置の困難さなどを問題視する指摘があり、直前になって町観光協会の選定は白紙に。交流センターは改装されたものの、指定管理者が決まらないまま「当面の措置」として町が管理・運営することになった。
 テナントも2度にわたり募集をかけたが希望者は現れなかった。一部町民からは「値段が高い」などと批判もささやかれていた。町担当者は「条例で決められた金額なので、変えられなかった。高いのも原因の一つだったのかもしれない」と話す。同町の60代男性は「ずっと放置されたままだった。町の怠慢だ」と憤る。
 誤算が続き町は指定管理者制度の導入を断念。3月の町議会定例会で陳謝した。町は今後「地元の不動産会社に見解を尋ねながら、テナントを貸し出せるようにしたい」としている。