長崎・五島で石灰華「トゥファ」 縄文中期から形成 北海道大大学院の研究員 「重要な地域資源」

2023/07/14 [12:30] 公開

高さ約2メートルのつらら状などが観察できるトゥファ=五島市三井楽町

高さ約2メートルのつらら状などが観察できるトゥファ=五島市三井楽町

  • 高さ約2メートルのつらら状などが観察できるトゥファ=五島市三井楽町
  • 近藤玲介さん(本人提供)
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 長崎県五島市三井楽町柏地区の海岸で、石灰が塊状になった沈殿物である石灰華の一つ「トゥファ」を、北海道大大学院農学研究院の近藤玲介研究員(48)=自然地理学=が確認した。同市は貴重な地層や地質が残る自然公園「日本ジオパーク」に認定されており「学術的価値は高い。観光や教育で有効活用できる地域の資源だ」としている。
 石灰華は石灰分の多い地下水が地表で酸素と触れ、沈殿して形成する。地域によっては、ご神体や観光名所になっている。温泉水からできるものと、温泉には直接関係のない水ででき、多孔質で軟らかなトゥファに大別。国内では沖縄など南西諸島で多い。本土では愛媛県などにもあるが、九州北部では珍しく、北限付近とみられるという。
 近藤さんによると、2年前、柏地区のトゥファは、砂丘の調査で海岸を歩いていたところ偶然見つけた。石灰分の多い砂丘から流れ出る地下水が影響し形成。幅約5メートル、高さ約3メートルにかけて観察できる箇所と、高さ約2メートルの鍾乳石に似たつらら状や、丸みを帯びたドーム状などが点在する箇所がある。周辺には小規模なトゥファも複数ある。石灰華とほぼ同じ成分の結晶も確認された。
 トゥファや貝の化石の炭素を測定するなどして形成時期を分析。4千年~4500年前ごろの縄文時代中期から始まったとみられ現在も成長しているという。
 近藤さんは詳しい調査を続ける考えで「貝など周辺の生物が化石として保存されやすいので、過去の環境を知る材料として、学術的に価値の高い地層の一種」と指摘。「そばの溶岩海岸などと合わせ、地元の自然が見える興味深い場所だ」と、今後の活用を期待した。