【ルポ】対馬・白嶽 山岳訓練に同行 遭難防止、装備品充実を 下山時にも危険潜む

2023/05/08 [11:30] 公開

担架で要救助者役を運ぶ署員たち

 自然豊かな長崎県対馬市では登山は魅力の一つ。「九州百名山」の白嶽(しらたけ)(518メートル)は知名度が高く、韓国人観光客にも人気がある。新型コロナウイルス感染症の水際対策終了と5類移行で、国内外から登山客が増えることも予想される。遭難や滑落…。毎年のように起きる山の事故。対馬南署の山岳遭難救助訓練に同行し、注意点などを聞いた。
 4月28日午後、美津島町の洲藻登山口に署員11人が集まった。白嶽山頂まで約2.2キロのコース。田川誠一署長を先頭に出発した。
 登り始めは緩やかな道が続く。国天然記念物に指定されている原始林や沢のせせらぎ、色鮮やかな花々が癒やしだ。所々に山頂までの距離を示す案内板が設置され、安心感があった。
 対馬観光物産協会によると、市内に名前の付く山は177あり、日本の市町村で最も多い。中でも白嶽は対馬を代表する山で、山頂に石英班岩の二つの岩峰がそびえ、白く神々しい。
 登山道は残り1キロを切った辺りから、徐々に勾配が険しくなる。ロープにしがみついたり、はったりして必死に登った。約1時間半で山頂付近にある今回のゴール「岩のテラス」と呼ばれる場所に到着した。

山頂付近の「岩のテラス」から見た景色。周囲の山々を見渡せる=対馬市の白嶽

開放感は抜群。周囲の山々を見渡せる絶景が広がり、涼しい風が心地よかった。
 対馬南署によると、2012年以降、管内での山岳遭難は約10件で、半数が白嶽だった。平山雄太地域課長は、事故を防ぐために登山届のほか、ルートや現在地が把握できる登山用スマートフォンアプリの利用が大切と指摘。「山を甘く見て『何となく』登るのは危険。水や靴などの装備品を充実させ、複数人で登るようにしてほしい」と話す。
 下山は気が緩みがちだが、危険は多い。石に足を取られて転んだり、ぬかるんだ地面に滑ったり。訓練は、麓付近で動けなくなったとの想定で遭難者役の警察官を担架で運び、終了した。田川署長は「下りは勢いが出やすく、けがをしやすい。登りで余力を残しつつ、慎重に下ってほしい」と話した。
 今回、体力のある警察官と同じペースで登ったが、本音を言うと、記者にはかなりハードだった。次は森林浴も楽しみながらゆっくり、マイペースで登りたい。