もらい手が少ない成猫 譲渡に注力 長崎・佐世保の保護猫カフェ

2023/04/27 [10:30] 公開

多くの猫がくつろぐ保護猫カフェ=佐世保市、幸せのタネ製造所cafeモフモフ社

 約15年にわたり長崎県内で野良猫のTNR(捕獲、不妊・去勢手術をして地域に戻す活動)などに取り組むボランティア団体「長崎ねこの会」は、子猫よりもらい手が少ない成猫の譲渡を伸ばそうと昨年3月、佐世保市春日町に保護猫カフェ「幸せのタネ製造所cafeモフモフ社」を開いた。1年が経過し関係者は「譲渡先が譲渡会の4倍決まった」と手応えを感じている。
 「この辺りにあるはずなんだけど…」。建物を見つけられずに電話をかけると、同会代表の尾崎佳子さん(仮名)が道まで出てきてくれた。薄茶色の一軒家。民家のような外観に意表を突かれた。水色の玄関ドアの隣にカフェの表札がある。「猫たちにとっては仮とはいえ、すむ家だから、自宅のような造りにしたかった」と尾崎さん。
 猫に菌が移らないよう玄関で靴を脱ぎ、除菌スプレーで手や靴下を消毒。猫カフェを訪れるのが初めてのため期待に胸を膨らませ、脱走防止扉を開いて猫たちが居る2階へ向かった。
 同会は猫の殺処分数ゼロを目指して2008年5月に尾崎さんが設立した。メンバー約20人で活動している。佐世保を中心に長崎県内各地でTNRに取り組み、これまでの避妊去勢手術数は約4千匹に上る。譲渡活動にも注力しており月2回、長崎県内各地で譲渡会を開催し、18年には猫を保護し譲渡につなぐシェルターを設けている。
 設立当初から、殺処分の大半を占める野良の子猫が減少したら成猫の譲渡に力を入れようと計画。保護猫カフェの開設を見据え保護猫カレンダーの販売などで資金をためてきた。長年の取り組みなどで佐世保市の殺処分数が減少してきたため、開設に踏み切った。 保護猫カフェは木造2階建て、延べ床面積約160平方メートル。

保護猫カフェの外観は薄茶色の一軒家

コロナ禍で集客には苦労した。それでも年間5匹が決まれば万々歳の成猫の譲渡が開設1年で20匹決まった。直接触れ合うことができ、譲渡会では見ることができない普段の姿から個性がわかると受け入れられやすいという。
 カフェには毎日20~25匹の猫が“出勤”する。キャットタワーやソファの裏など至る所で猫がくつろいでいる。猫と戯れ、飲み物はガラス窓で仕切ったスペースで。アクリル板のキャットウオークでは肉球まで見える。保健所から引き取った猫たちは同会が費用を負担して動物病院で健康状態を確認。ワクチン接種などを済ませ、人慣れしてから2階デビューを果たす。
 希望者は適正飼養ができるよう脱走防止対策の実施など十数個の条件をクリアする必要があり、数週間のトライアル期間で相性など見て譲り受けに至る。尾崎さんは「皆が責任を持って猫と向き合っていれば、私たちみたいな活動や施設は必要ないんだけど。幸せにしてくれる人に手渡す責任があるし、猫も人間も幸せになってほしいから譲渡基準は厳しくしている」と明かす。これまでの譲渡数累計は975匹になった。
 同カフェは予約制。予約は同カフェのインスタグラム(cafe_mofumofusha)から。
 取材に訪れると猫たちが擦り寄ってきてうれしくなった。「ここは猫にとっては寮みたいなもの。くつろげても自分だけの“お膝”はない。甘えたくて集まってくるんですよ」と尾崎さん。人間と同じように猫にも居場所が必要なのだ。一日でも早く、自分だけの特等席の温かいお膝が見つかりますように。