ドメスティックバイオレンス(DV)に悩む女性らを支援するNPO法人「DV防止ながさき」が今月、設立20周年を迎えた。被害者だけにとどまらず、母子支援や県との協働などにも先駆的に取り組み「長崎モデル」と評価される。中田慶子理事長(73)は「被害者に寄り添った支援を続けたい」と思いを新たにしている。
2001年の配偶者暴力防止法(DV防止法)施行を機に、啓発と被害者支援に取り組もうと中田理事長を中心に02年9月に発足させた市民グループが母体。03年に法人化した。現在会員約60人。被害者の相談相談やサポート、中高生へのデートDVの予防教育などをしている。
電話に加え、今年3月から交流サイト(SNS)を利用した相談にも対応。被害者に「あなたが悪くて暴力を受けているわけではない」ことを伝えている。必要があれば警察や弁護士などにつなぐ。中高生向けの予防教育を始めた04年当初は「生徒らにDVの話は早すぎる」「寝た子を起こすな」との批判もあったが、学校現場からのニーズは高く、近年は年間約100校で実施。活動は着実に浸透してきている。
被害者を救うため奔走してきた20年。課題もある。中田理事長によると、被害者は周囲と遮断された環境に置かれ、一人で苦しんでいるケースも多いという。支援の情報をどう届けるかが鍵となる。心理的虐待「面前DV」で傷ついた子どもたちをサポートするため「子どもに関わる保育士や教職員らへの啓発にも力を入れる必要がある」と力を込める。
被害者支援の立場から、18年から加害者更生プログラムの実施団体に協力。行政機関とも幅広く連携し、高い評価を得ている。DV問題に詳しい日本公認心理師協会の信田さよ子会長(76)は「長崎のように加害者対策やDVを受けた母子への支援などをやっている団体は全国でも少ない。現場の要請に忠実で柔軟な支援を実施している」と語る。
時代とともに、求められる支援も制度も変化する。DVや性被害、生活困窮に苦しむ女性への包括的な支援を目的とする「困窮女性支援法」が24年に施行される。中田理事長は「女性の人権を守り、自立を支援するもの。一時保護だけでなく中長期の支援を明記した法律で画期的」としつつ「実際にどのように運用されるか注視していく必要がある」と話した。
被害者に寄り添い20年 NPO「DV防止ながさき」中田理事長、思い新たに
2022/09/30 [12:10] 公開