激動 民主全勝 政権交代09ながさき
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大型事業の行方
 不透明さ増す諫干、新幹線
 中央と地方で不協和音

 諫早湾干拓の潮受け堤防排水門の開放、九州新幹線長崎ルートの延伸−。公共事業を大幅に見直すという民主党政権の誕生で、本県の大型事業の行方が不透明さを増している。

 8月、諫干の北部排水門に近い1千坪のアサリ養殖場は、潮が引くと死骸(しがい)で埋め尽くされていた。漁業者の松永秀則はこうした被害が出るたび、諫干調整池からの排水が原因と訴えるが、国や県は因果関係を認めない。

 諫干をめぐっては二つの訴訟が続いている。どちらも漁民が常時開門を求め、国は防災や営農への影響を理由に「困難」と主張。このうち有明海沿岸漁民による訴訟では、佐賀地裁が昨年6月、5年間の常時開門を命じた。国は控訴審で争う傍ら、開門調査を行うかどうかを判断する環境影響評価(アセスメント)を準備している。

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諫早湾干拓や九州新幹線長崎ルートへの対応を迫られる本県選出の民主党衆院議員(コラージュ)
 もう一つは、諫早市小長井町などの漁民が長崎地裁で係争中。原告団長の松永は自民党員だが、長崎2区で当選した民主党の福田衣里子(28)を支援した。薬害肝炎訴訟で国と争った福田に「官僚支配の打破」という自身の夢を重ねた。ただ民主党県連は開門に反対しており、福田も「開門調査が即、排水門の開放とは限らない」とこれに倣う。それでも松永が望みをつなぐのは、党中央や隣県の空気が違うからだ。

 同党はマニフェスト(政権公約)では開門に触れなかったが、7月発表の政策集インデックス2009に「開門によって営農に塩害などの影響が生じないよう対策を講じ、入植農業者の理解を得る」と記載。佐賀県では、原口一博(50)ら衆院議員が即時開門を訴え、知事の古川康も政権交代を「開門調査実現にいい追い風になる」と歓迎した。

 「民主党にはいろんな考えの人がいる。誰が農相になるかで事態は変わる」。開門反対派をまとめる前諫早商工会議所会頭の栗林英雄は、共に諫干事業を推進した自民党、久間章生(68)の落選の影響を懸念しつつ、新たな陳情先の動向を注視する。

 こうした民主党内のねじれは、新幹線にも影響するのか。長崎ルートの武雄温泉−諫早間は既に着工。残る諫早−長崎間は、今年中に部分着工を認可することで政府・与党が昨年12月に合意し、JR長崎駅部の設計測量が予算に盛り込まれた。だが民主党幹事長の岡田克也は7月、遊説先で、新幹線も公共事業の見直し対象に含むと発言。「推進」を強調する県連との温度差がにじんだ。

 新政権が先の合意に沿い、財源を確保してくれるのか−。早期完成を望む長崎商工会議所会頭の松藤悟は測りかねている。建設費約3700億円のうち、予算化されたのはまだ80億円にすぎない。「完成が延びないかは、民主党内での地元議員の力にかかっている」(敬称略)


2009年9月7日長崎新聞掲載