真剣な表情で朗読を聞く生徒たち=諫早市、琴海中

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ピースサイト関連企画

被爆・戦後75年 声に願い込め 朗読・永遠の会(1) 【対面】子どもの感想 支えに

2020/08/04 掲載

真剣な表情で朗読を聞く生徒たち=諫早市、琴海中

真剣な表情で朗読を聞く生徒たち=諫早市、琴海中

【対面】子どもの感想 支えに

 「長さは私の身長の倍くらい。直径は手を広げたサイズでしょうか」-。7月上旬、諫早市多良見町の市立琴海中。大塚久子(62)が身ぶり手ぶりで生徒に語りかけた。スライドを使って説明したのは、長崎に投下されたプルトニウム型原爆「ファットマン」。生徒らは、その大きさに驚いたように目を丸くした。
 朗読ボランティア「被爆体験を語り継ぐ 永遠(とわ)の会」の活動の一こま。代表の大塚はこの日、副代表の尾崎眞理子(68)と同校を訪れていた。
 同会は、長崎市の国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館が2012年に市民を対象に募集した「被爆体験記朗読ボランティア育成講座」の受講生らで発足。現在、40~80代の男女76人が名を連ねる。
 朗読に適した被爆体験記を選ぶと、要所をピックアップ。学徒動員や女子挺身(ていしん)隊など難しい言葉が出てくる場合は、分かりやすく説明を加えるなどして朗読文を練り上げていく。プログラムは、読み聞かせる相手の年齢層、地域性などによってさまざまだ。
 伝えるのは手記にある被爆体験だけではない。同校での朗読でも、大塚らは、まず最初にそこに描かれている戦時中の情景を子どもたちが思い浮かべやすいよう、熱線で溶けた瓦や爆風で飛ばされた木々の写真などをスライドで示した。原爆被害についても、身近な数字と比較して考えられるよう工夫している。そして何よりも同会がこだわっているのは“対面”での朗読。それは、息遣い、表情も大切な表現の一つだと考えているからだ。
 「爆心地から1キロや2キロという距離は歩いたり走ったりすると、けっこう遠い。それが一瞬で焼け野原になったと考えると、今すぐ世界から核兵器をなくしてほしい」「私たち若い世代にちゃんと伝えるために、被爆者じゃない方々もボランティアとして活動してくれている。それだけ、原爆は恐ろしいものだったんだ」-。この日、同校の生徒からはこんな感想が聞かれた。会のメンバーの大半は戦争を知らない世代。「被爆者ではない私たちに、どこまで伝えられるだろうか」。そう思い悩みながら活動するメンバーらにとって、子どもたちのこうした声が支えになっている。(文中敬称略)
      ◇
 被爆者が残した体験記を基に、被爆の実相、平和の尊さを語り継いでいる永遠の会。声に願いを込め、朗読を続ける人々の思いを追った。