歌で平和を訴える活動を続ける山田さん=諫早市内

ピースサイト関連企画

被爆・戦後75年 ナガサキ・ユースの視点 若者と平和活動・4 【継続】平和への思い五線譜に 山田ゆりさん(27)=5期生=

2020/07/21 掲載

歌で平和を訴える活動を続ける山田さん=諫早市内

【継続】平和への思い五線譜に 山田ゆりさん(27)=5期生=

 あの夏の晴れた日に 落とされた爆弾が 私の愛しい家族と街を奪った-。
 柔らかな旋律に乗って、芯のある歌声が響く。一瞬で大切な人を奪われた被爆者の悲しみ、そして平和への思いを五線譜に込めた「未来への願い」。作詞作曲したのは、ナガサキ・ユース代表団5期生として活動した山田ゆり(27)だ。
 父方の祖父(故人)は16歳の時、長崎原爆で入市被爆。原爆に肉親を奪われたつらい過去を抱え、山田が幼いころから何度も「原爆は駄目。平和が一番よか」と教えくれた。そんな祖父の思い、メッセージが自身の心の根底に流れ続けている。
 活水女子大時代には長崎の被爆者にインタビューし、その証言映像を配信した。卒業後は長崎市内のゲストハウスに就職。祖父のような被爆者を二度とつくり出さないよう、働きながらでも自分にできることはないか-。ユース代表団の5期生募集に手を挙げたのは、そんな時だった。
 ユース代表団として活動していた2017年2月、広島、長崎への原爆投下で両方の爆撃機に搭乗した米軍人の孫で、写真家のアリ・ビーザー氏の存在を知る。長崎の山王神社の被爆クスノキなどを撮影し、得意の写真で世界に平和を訴えるビーザー氏の姿に、「自分ができることで平和に貢献したらいい」と気付いた。自分にできること-。3歳からピアノを、学生時代からは声楽を学んでいた山田にとって、それは音楽だった。
 今を生きる全ての人たちに、みんなで手を取り合って平和な世界をつくっていこうとのメッセージを送る「未来への願い」は、約2分半の楽曲。歌う時、いつも長崎の晴れた青空を思い浮かべ、被爆者の心と自分の心を重ね合わせる。これまで長崎や東京の集会などで歌った。「情景が思い浮かんだ」「心にスーッと届いた」。そんな反応がうれしい。
 毎年、「長崎原爆の日」前夜の8月8日に長崎の平和公園で催される「平和の灯」コンサート。その出演者に今年、初めて選ばれた。新型コロナウイルスの影響で、収録した映像での出演になるが、「二度と自分と同じつらい思いをさせたくないという被爆者の願いを、歌で伝えたい」と心新ただ。自分にできることで、平和な世界を訴えていく活動をこれからも続けたい。山田は今、プロのソプラノ歌手を目指している。
(文中敬称略)


 県や長崎市、長崎大でつくる核兵器廃絶長崎連絡協議会が県内の学生らを対象に募集し、国連本部で開かれる核拡散防止条約(NPT)再検討会議へ派遣するなどしている「ナガサキ・ユース代表団」。本年度が8期生になる。現役生や経験者への取材、長崎新聞社が実施したアンケート結果を通して、平和活動への若者の思い、課題を考える。

◎アンケート結果
 -現在、平和活動をしているか(現役除く)。
 ▽はい 36%
 「被爆体験を語り継ぐ交流証言者として活動」(2期・27歳女性)
 ▽いいえ 58%
 「仕事や学業との両立が難しい」(複数)
 「長崎は平和活動の場が多くあったが、現居住地にない」(5期・24歳男性)

 -今後、平和活動をしたいか(現役含む)。
 ▽はい 92%
 「自分にできることがあれば、微力ながら関わりたい」(7期・21歳男性)
 「ユースでの平和活動がきっかけで今の仕事に就いている。初心を忘れないように今後携わりたい」(3、4期・25歳男性)
 ▽いいえ 5%