長大レクナ NPT 第3回準備委報告 3

準備委のNGOセッションで発言する広島の女性被爆者(前列右)=4月29日、国連本部(RECNA撮影)

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長大レクナ NPT 第3回準備委報告 3 自己満足の核兵器国
核軍縮の進展 課題多く

2014/05/02 掲載

長大レクナ NPT 第3回準備委報告 3

準備委のNGOセッションで発言する広島の女性被爆者(前列右)=4月29日、国連本部(RECNA撮影)

自己満足の核兵器国
核軍縮の進展 課題多く

29日の準備委で、広島、長崎両市長や被爆者は、被爆地からの声を伝えた。特に田上富久長崎市長は、若者の「ナガサキ・ユース代表団」に触れ、被爆者の思いや記憶を継承する努力が核兵器の非人道性を訴える上で不可欠であることを指摘。核廃絶に向けて核保有国はもちろん、核の傘依存国の責任も重いことを強調した。この演説は日本政府としても耳が痛かったに違いない。

一般討論は、米ロ英の3核兵器国が登壇。ガテマラー米国務次官がマーシャル諸島や広島を訪問した体験を踏まえ、「(核兵器の)人間への影響を記憶にとどめることが必須である」とあえて言及したことは興味深い。長崎市長らや前日のマーシャル諸島の演説は、「ヒバクシャの声を忘れるな」という強いメッセージとなったようだ。

しかし、それ以外の核兵器国の演説内容は、やや自己満足と言われても仕方がないだろう。ガテマラー氏は、米国の核弾頭数をピークの1967年の3万1255発から4804発に減らしたことを挙げ、核軍縮の確かな進展を強調。削減を続ける意向を示し、核軍縮への積極姿勢を打ち出した。この論調は英ロ仏もほぼ同じで、核軍縮の進展を評価すべきだという主張を込めていた。中国は、準備委に出した報告書で、当初から最小レベルの自衛の核兵器しか生産していないなどと強調している。

だが核軍縮のさらなる進展には実際、課題が多い。解体した核兵器から回収される核物質の管理や処分については、これまで全くと言っていいほど触れられていない。米ロの合意に基づき、核兵器から回収した高濃縮ウランを希釈し原子力発電用の低濃縮ウラン燃料として使われてきた点は評価されていいが、この「メガトンからメガワットへ」というプロジェクトも間もなく終了する。また核兵器のプルトニウムについては全く進んでいない。

ロシア、ウクライナ問題も気になる。ロシアは、この問題は核兵器の問題ではないとした。しかしソ連崩壊後の94年、核兵器を放棄する見返りに主権と国境の尊重、安全保障を約束した「ブダペスト覚書」を米英ロと交わしたウクライナは、今回のロシアによるウクライナ南部クリミアの編入が覚書に明確に違反すると主張。米英、欧州連合(EU)なども同調し、ロシアと対立する様相。今後の議論に影響を与えそうだ。