原爆投下国へ
 NPT再検討会議に向けて 6

「NPT会議で核兵器削減の具体的な方法と期限が確認されれば」と期待を語る朝長さん=日赤長崎原爆病院

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原爆投下国へ NPT再検討会議に向けて 6 日赤長崎原爆病院長 朝長万左男さん(66)
核兵器は究極の“疫病”

2010/04/06 掲載

原爆投下国へ
 NPT再検討会議に向けて 6

「NPT会議で核兵器削減の具体的な方法と期限が確認されれば」と期待を語る朝長さん=日赤長崎原爆病院

日赤長崎原爆病院長 朝長万左男さん(66)
核兵器は究極の“疫病”

3月20日、非政府組織(NGO)核兵器廃絶地球市民長崎集会実行委の会合。委員長退任を表明した土山秀夫元長崎大学長(84)に後任指名され、受諾した。NPT再検討会議に合わせて渡米する同実行委派遣団の団長も務める。

2歳のとき、爆心地から2・7キロの自宅で被爆。医学の道に足を踏み入れたころ、白血病が子どもや若者を中心に多く現れていたことから長崎大医学部原研内科に入局し、被爆による白血病の研究に従事した。昨春退官し、日赤長崎原爆病院(長崎市茂里町)の院長に就任。病に苦しむ被爆者の多さをあらためて実感している。

1980年発足の核戦争防止国際医師会議(IPPNW)にかかわったのは83年。米ソ冷戦真っただ中の時代。IPPNWは、米ソで核戦争が起きたら北半球が壊滅するだけでなく、吹き上がった核のごみが成層圏を漂って日光を遮り、南半球も含めて人類が滅亡する「核の冬」に至るという研究結果を発表。米ソの指導者たちに「核戦争はできない」という考え方を認識させた。85年、IPPNWはノーベル平和賞を受賞した。

「医師でも核兵器廃絶に向けて科学的な活動をすれば大きな影響を与えることができる。治療や研究ばかりでなく、もっと被爆の現実を情報発信することも必要だ」。そう感じた。

核兵器が人々を一気に殺傷することは誰でも知っている。しかし広島、長崎の具体的な被爆の実相はなかなか世界に伝わらない。米国メディアは原爆投下の後ろめたさがあるのか、核兵器や被爆に関するニュースをあまり扱わず、日本政府も国際的な場で原爆の被害や核廃絶について積極的に発言してこなかった。

現在の世界は「互いに核兵器を持てば戦争はできない。それこそが平和なんだ」というねじれた、病的な国際関係で成立している。

核兵器は人類をむしばむ“病原体”、究極の“疫病”とIPPNWはみなす。オバマ米大統領の「核兵器なき世界」はすなわち、すさまじい力を持つ核兵器産業を解体しながら、この疫病を退治していく事業。世界の民衆の支持、支援が必要不可欠だ。人類は一度得た強大な武器を英知によって手放すことができるのか。それが試されている。

5月のNPT再検討会議は世界のNGOが結集する機会でもある。新たなエネルギーをもらってこようと思っている。