「核なきあす」を考える
 地球市民集会ナガサキ 2

「核兵器禁止条約を日本政府は後押ししてほしい」と話す山田氏=東京都千代田区、明治大

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「核なきあす」を考える 地球市民集会ナガサキ 2 明治大法学部兼任講師 山田寿則氏(44)
分科会「核兵器禁止条約へ」コーディネーター 全廃へ仕組みづくりを 最大の壁は抑止論

2010/02/02 掲載

「核なきあす」を考える
 地球市民集会ナガサキ 2

「核兵器禁止条約を日本政府は後押ししてほしい」と話す山田氏=東京都千代田区、明治大

明治大法学部兼任講師 山田寿則氏(44)
分科会「核兵器禁止条約へ」コーディネーター 全廃へ仕組みづくりを 最大の壁は抑止論

核兵器禁止条約は核廃絶を考えるときに避けて通れないテーマだ。国際社会では(核兵器禁止条約が必要だ、と)支持する動きが広がってきているが、日本ではあまり認知されていない。具体的な提案、議論があることをまずは知ってもらいたい。

1996年、国際司法裁判所(ICJ)が核の違法性を論じた「勧告的意見」を出した。非政府組織(NGO)の運動や勧告的意見を背景に、同年以降、国連総会には勧告的意見の確認と、核兵器禁止条約の交渉開始を呼び掛ける決議が提出され続けている。主に発展途上国の賛成票を集めて毎年、採択されてきた。

これとは別に、97年には国際反核法律家協会など三つのNGOが中心となり、具体的な条文を明示したモデル案を起草している。取り外した核弾頭を国際管理の下に置くなど五つの工程を示し、発効から15年で、核実験施設なども含めた核兵器の全廃を提案。未発効の包括的核実験禁止条約(CTBT)や、交渉も始まっていない兵器用核分裂物質生産禁止(カットオフ)条約の内容まで含んだ案だ。

(97年に発効し、化学兵器の開発や生産、貯蔵、使用を全面的に禁止する)化学兵器禁止条約など既存の条約を参考につくられており、その意味では現実味はある。国連の潘基文事務総長も核兵器禁止条約の考えに賛意を示し、モデル案にも言及して「よい出発点になる」と発言している。日本とオーストラリア両政府の呼び掛けで発足した賢人会議「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」が昨年12月に両国首相に提出した報告書にも、核兵器禁止条約の研究をやるべきだとする提言が盛り込まれた。

一方、国連総会での毎年の決議案には中国やインド、パキスタン、北朝鮮は賛成しているが、頑として反対してきたのが米国、ロシア、イスラエルだ。「現実的ではない」という声が一部の核保有国にはある。(米国の核抑止力に依存する)日本は棄権している。実現のためには核抑止論から決別しないといけない。それが最大の壁だ。

そのためにも、核兵器がもたらす悲惨さ、むごたらしさを知り、やはり核兵器は使ってはいけないという規範意識を市民社会の中にきちんと根付かせていく必要がある。専門家だけでの議論であってはいけない。NGO、被爆地の役割は大きい。

◇ ◇ ◇

「核兵器禁止条約へ-目標を明記して段階的アプローチを」は7日午後2時~4時半、長崎原爆資料館。聴講無料。

やまだ・としのり 富山県生まれ。専門は国際法。2001年から現職。共訳に「地球の生き残り-解説 モデル核兵器条約」(日本評論社)。日本反核法律家協会のメンバー。