被爆樹とともに 記憶伝えた64年 5

校庭の隅で子どもたちを見守るクスの木=長崎市立稲佐小

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被爆樹とともに 記憶伝えた64年 5 稲佐小のクスの木
=爆心地から2.0キロ地点で被爆
命の灯火「2世」へ

2009/07/26 掲載

被爆樹とともに 記憶伝えた64年 5

校庭の隅で子どもたちを見守るクスの木=長崎市立稲佐小

稲佐小のクスの木
=爆心地から2.0キロ地点で被爆
命の灯火「2世」へ

長崎市立稲佐小(稲佐町)の校庭にある被爆したクスの木。周りの木とは対照的に葉を付けていない。6年ほど前までは青々とした葉を付けていたというが、「この木はいつも丸裸。葉っぱを見たことがない」という児童もいる。

同校の卒業生で、近くに住む長浦時雄さん(90)によると、同校校庭は3分の1くらいが山で、木の実などが採れた。そのころからすでに、クスの木はあったそうだ。原爆投下後も「この木は青々としており、元気だった」と話す。何が原因で樹勢が衰えたのか。

原爆により同校は、鉄筋コンクリートの校舎やクスの木などを残し、木造校舎が倒壊するなど大きな被害を受けた。その後、被爆した校舎は1993年に建て替えられている。

2003年に、当時の校長がクスの木の異変に気付き、樹木医に診断してもらった。それによると、建て替え工事の際にクスの木の根の一部が切られたため、著しく樹勢が衰えたらしい。「手のつけようがない状態」だったという。

しかし現在、被爆クスの木の近くに「2世」とみられるクスの木が育っている。同校5年生のグループは平和学習の一環で、このクスの木の「親子」を題材として発表している。

「原爆や戦争があっても、頑張って生きる姿は、木も人間も同じだと思いました」と児童ら。

同校で原爆の悲惨さを伝えてきたクスの木は、そのメッセージを「2世」に託し、校庭の隅で静かにたたずんでいる。