沈黙
 =被爆遺構= 3

爆風で傾いたままの状態で現在も使用されている船型試験場=長崎市文教町

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沈黙 =被爆遺構= 3 三菱重工長崎研究所船型試験場 内側に傾いた壁

2008/08/07 掲載

沈黙
 =被爆遺構= 3

爆風で傾いたままの状態で現在も使用されている船型試験場=長崎市文教町

三菱重工長崎研究所船型試験場 内側に傾いた壁

長崎市文教町の「文教町」バス停の近くにある黒ずんだ鉄筋コンクリート。周囲の景色とは違和感を覚えるその建物内では、船舶の推進性能の研究が行われている。立ち止まって建物を見詰めると、壁が内側に傾いている。

爆心地から北北東に一・七キロにある三菱重工長崎研究所船型試験場。全長約三百メートルの細長い建物に六十三年前、原爆の猛烈な爆風が直撃した。屋根はすべて吹き飛び、壁には亀裂。崩壊は免れたが上部は爆心地とは反対方向に倒れかかった。

「被爆建造物等の記録」(長崎市編さん)によると、試験場は、三菱重工長崎造船所が、海軍からの要請に応え、大型で最新の推進性能を計測できる試験水槽として一九四三年に設立。通常の船舶のほかに、小型木造船の先端に爆薬を積み、敵艦に体当たりする「特攻兵器」の研究をしていたという。

以来六十三年間、すさまじい爆風に耐えた試験場は、今も現役で操業を続けている。戦争と原爆の記憶を持ったまま無言で作業を見守る。