核なき世紀を語る
 =地球市民集会ナガサキを前に= 6

「被爆者の実態を長崎から発信することに意義がある」と語る山田拓民さん=長崎市岡町、長崎被災協

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核なき世紀を語る =地球市民集会ナガサキを前に= 6 被爆者フォーラム コーディネーター 山田 拓民さん(72)
長崎被災協事務局長
◆58年の苦しみが原点

2003/11/19 掲載

核なき世紀を語る
 =地球市民集会ナガサキを前に= 6

「被爆者の実態を長崎から発信することに意義がある」と語る山田拓民さん=長崎市岡町、長崎被災協

被爆者フォーラム コーディネーター 山田 拓民さん(72)
長崎被災協事務局長
◆58年の苦しみが原点

現在、核兵器をめぐり、世界は大変危険な状況にある。北朝鮮などへの核拡散に加え、米国は「使える核兵器」の開発を進めている。これまで核兵器は威嚇の兵器だった。そのため保有国同士の使用を抑止することになってきたが、現実に核兵器が使われる可能性が出てきている。

二〇〇〇年五月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議で、米国を含め参加国が核兵器廃絶に向け明確な約束を取り付けるなど、前回は二十一世紀を核のない時代にしようと希望を見いだすことができた。今回は、それがひっくり返ったような状況。だからこそテーマを広島、長崎の「被爆者」の五十八年間の苦しみを明らかにするという原点に立ち戻ることにした。

米国が開発を進める小型核兵器の規模は、広島、長崎に投下された原爆とほぼ同じ。現実に広島、長崎で“小さな核兵器”が使われたという実態を明らかにすることは、核の暴走を食い止める有効な警告の手段になる。

日本政府は戦争責任の回避のため原爆被害の実態にふたをし、小さく見せようとしてきた。それが顕著に現れたのが、原爆症認定の在り方。政府の方針は、原爆被害を隠そうとする米国の意に沿うもので、結果的に米国の核戦略を補完する役割を果たしてきた。

平和を脅かす中心には、核兵器の脅威がある。イラク戦争では核兵器は使用されなかったが、次に使われない保証はない。原爆投下は人類に対する犯罪であり、日本政府も戦争責任を自覚すべきだ。

だからこそ分科会での討議は、核兵器やそれをもてあそぶ人たちへの批判にしなければならない。これからの平和や核兵器廃絶運動の新しい出発点になればと考えている。

被爆者 被爆者援護法によれば、被爆者は(1)原爆投下当時の広島市か長崎市、それらの隣接区域で直接被爆(2)原爆投下から2週間以内に爆心地から2キロ以内に入った(3)死体処理や救護など2週間以内に原爆の放射能の影響を受ける事情にあった(4)以上の被爆者の胎児で、被爆者健康手帳の交付を受けている―としている。今年3月現在、全国の被爆者数は27万9052人。