絵は語る
 =『あの日』見たナガサキ= 8

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絵は語る =『あの日』見たナガサキ= 8 米村トシさん(89)
(熊本市野田2丁目)
教授を のみ込んだ光

2002/08/06 掲載

絵は語る
 =『あの日』見たナガサキ= 8

米村トシさん(89)
(熊本市野田2丁目)
教授を のみ込んだ光

時刻A=十一時一分。

長崎市内、湊川孟弼教授の自宅書斎。当時五十歳代だった教授はノートに何かしたためていた。活水女学院で哲学を教えていた。「その、やさしい物腰とわかりやすい授業は、生徒たちのあこがれの的でした」。同学院の教員だった米村さんは振り返る。

時刻B=十一時二分。

瞬間、窓の外が青く、赤く、黒く…。さまざまな色が交錯し、部屋の中に入ってきた。まぶしい光が教授をのみ込んだ。

時刻C=十一時三分。

湊川教授は一瞬にして亡くなった。きっと何も考える暇はなかっただろう。でも、最期まで生徒のため仕事をしていた。

当時三十二歳だった米村さんは爆心地から遠い自宅にいた。しばらくたって教授のことを想像し描いた。

今年、八十九歳になった。一日も寝込むことなく元気に過ごしている。教授のことはずっと忘れないでいる。