核軍縮の危機
 =米国へ届け長崎の声= 3

米国防総省が公開している報告書「核体制の見直し」の概要のコピー

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核軍縮の危機 =米国へ届け長崎の声= 3 核依存
「使用」カード見せ脅し

2002/06/27 掲載

核軍縮の危機
 =米国へ届け長崎の声= 3

米国防総省が公開している報告書「核体制の見直し」の概要のコピー

核依存
「使用」カード見せ脅し

今年一月、米国防総省が公表した報告書「核体制の見直し」は、長らく国防の柱だった大陸間弾道ミサイル(ICBM)などの戦略核を「重要だが、現在は戦力の一部にすぎない」と記した。

核大国同士の相手国施設に照準を合わせ、互いに先制攻撃を思いとどまらせる均衡核抑止は、今も即応照準が解除されておらず、体制は続行している。が、米国自身は報告書で「緊急事態には不適」とし、冷戦期を通じてこだわり続けた金科玉条を、あっさり投げ出してしまった。

しかし、元長崎大学長、土山秀夫(77)は「米国の核依存は、むしろ強まった」と分析する。

米ロが調印した戦略攻撃兵器削減条約は、削減弾頭の備蓄が可能だ。「これまでの戦略兵器削減条約(START)では、削減弾頭は解体が前提。備蓄は核軍縮にとって明らかな後退だ」(土山)

一方、米国が言う「緊急事態」とは、テロ勢力や「ならず者国家」による「新たな脅威」を指す。大統領のブッシュは、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)やイラクなどを「悪の枢軸」と名指しし、今年三月には「あらゆる選択肢がある」と核使用も辞さない考えをも示した。

「核抑止は報復を警告する、いわば受け身の戦略。今回は、ならず者国家には先制攻撃も辞さない、と積極策に転じてしまった」。土山は「『核抑止は終わり、戦略核も減らす』という言い方にだまされてはならない」と強調する。

土山には、米政権は国防総省に乗っ取られている―と見える。

それは、同省が温めていた宿願の実現でもあるという。「国防総省には湾岸戦争直後の十年前、既に冷戦後の覇権国家を目指す青写真があった。それがクリントン政権登場でとん挫した。強硬派を抱えるブッシュ政権でやっと機会を得た」

その推進役として、産業界ぐるみで米国の権益を追求する構造の存在を挙げ「国防総省や国務省のポストと、軍事産業の間を往復する幹部たちの人脈を軸にした軍産複合体に、ブッシュ本人もどっぷりと漬かっている」と指摘。「アフガン作戦もミサイル防衛計画も、この構図の中で進められた」と言う。(敬称略)