どこにいても被爆者
 =李康寧裁判勝訴= 上

李さん(右から2人目)とともに控訴断念を訴える支援者ら=厚生労働省前

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どこにいても被爆者 =李康寧裁判勝訴= 上 2戦2勝
「司法の流れ固まった」

2001/12/28 掲載

どこにいても被爆者
 =李康寧裁判勝訴= 上

李さん(右から2人目)とともに控訴断念を訴える支援者ら=厚生労働省前

2戦2勝
「司法の流れ固まった」

「七十四年で一番価値のある一日だった。支援者の皆さんと喜びを分かち合いたい。国が控訴を断念するよう気を引き締めたい」―。同日夜、長崎市内で開かれた判決の報告集会。支援者らを前に李さんは紅潮した顔で勝訴をかみしめた。

原告や支援者らには勝訴の期待が強かった。今年六月、韓国人被爆者、郭貴勲さん(77)の同様の訴訟で大阪地裁は、国の解釈では国内に住む被爆者と在外被爆者に差別が生じ「違憲の恐れがある」とし、在外被爆者への援護法適用を認めていたからだ。

今回の長崎地裁判決は憲法には言及しなかった。しかし、原告代理人の龍田紘一郎弁護士は「当たり前の主張なので憲法に踏み込むまでもない。大阪地裁は初の判断だったため傍論に至るまで判決の正当性を強調した。長崎地裁判決は単純明快で分かりやすい。安定している」と評価する。

判決は援護法について「根底に国家補償的配慮があり、在外被爆者のみに不利益となるような限定的な解釈はすべきでない」と強調。国が示した「不適用」の根拠をいずれも退け、在外被爆者に対する国の法解釈の違法性を指摘した。

厚生労働省は大阪地裁判決後の八月、在外被爆者に関する検討会を設置し、今月十八日には当面の援護策を打ち出した。一方で、省令などに「被爆者健康手帳は国内のみ有効」と明記する方針を示し、法の枠外で援護するとの姿勢を変えていない。

判決は「(省令などの規定では)被爆者援護法の適用対象者を限ることはできない」と“くぎ”を刺しており、国の姿勢があらためて問われている。

いったん被爆者健康手帳を取得した「被爆者」の地位は出国で奪われない、との司法判断が二回続けて示された。「二戦二勝。司法の流れは固まった」。支援者らは勢いづいている。