託された「宿題」
 =高校生平和大使の報告= 5(完)

高校生平和大使とオランダの若者たち。共に平和を求める未来への可能性を感じさせた=オランダ・アムステルフェーン市

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託された「宿題」 =高校生平和大使の報告= 5(完) 交 流
「違い」を認め理解し合う

2001/09/07 掲載

託された「宿題」
 =高校生平和大使の報告= 5(完)

高校生平和大使とオランダの若者たち。共に平和を求める未来への可能性を感じさせた=オランダ・アムステルフェーン市

交 流
「違い」を認め理解し合う

八月二十七日、高校生平和大使一行を迎え、オランダ・アムステルフェーン市が開いた特別議会。平和についてスピーチした現地の若者四人のうち、高校生のステラ・バッカース(16)は、こう発言した。

「罪のない人の上に原爆が落とされてはいけないが、世界に破壊の脅迫がある方が平和を保てる場合もある。自らの身に原爆が落とされる危険があるのに、戦争する人はいないと思うから」。核の脅威で自国を防衛する「核抑止論」の肯定だった。

一貫して核廃絶の必要性を信じてきた高校生平和大使の堤千佐子(長崎東高三年)、野副由布子(長崎北陽台高二年)、能木絵美(大村高二年)は「正直、戸惑った」「そうした意見があるのは知っていたが、面と向かって言われたのは初めて」とショックを受けながらも、「意見の違いを知り、語り合うことが大切」とオランダの若者の発言に耳を傾けた。

特別議会に先立ち、市内各所を視察した際、スピーチしたオランダの若者も同行。平和大使と片言の英語でそれぞれ自己紹介するなどすっかり打ち解けていた。議会での交流が終わり、見送ってくれた若者たちに、バスからいつまでも手を振り続けた三人の目にはあふれる涙があった。

堤は言う。「(オランダの若者は)考え方は違っても、平和について真剣に考えていた。『高校生一万人署名』の仲間のように本音で話せる心の通い合った友人になれた気がした」

同議会では同市の若者を長崎に招いての交流も提案した。M・H・カンプハウス市長は「若者に平和実現を託したい」と賛同。訪問は年内にも実現する見込みだ。

「被爆者の話を聞かなければ、私たちも核廃絶を真剣に考え、訴えることはなかったかもしれない。だからこそ、私たちが感じた恐ろしさを長崎に来て知ってもらえば、きっと核をなくすことの大事さを分かってくれるはず」。堤はそう確信している。

今年、被爆地の高校生が核廃絶という共通の願いの下に、結集した「高校生一万人署名」活動。その代表でもある平和大使三人の署名簿を届ける旅は終わった。その旅の最後に見せた「涙」は、国籍や意見の違いを乗り越え、若者が平和に向け心を通い合わせる可能性を感じさせた。

今後、三人が署名活動を共にした仲間とともに、与えられた「宿題」にどんな答えを見いだすのか。核廃絶という悲願実現を目指す高校生の新たな模索は、始まったばかりだ。(文中敬称略)