被爆地ナガサキの課題 1

HOYAの米核融合実験施設への製品納入に抗議した「反核9の日座り込み」=6月9日、長崎市の平和公園

ピースサイト関連企画

被爆地ナガサキの課題 1 NIF問題
水爆開発につながる―原 水 禁
“核爆発”当たらない―HOYA

2001/07/17 掲載

被爆地ナガサキの課題 1

HOYAの米核融合実験施設への製品納入に抗議した「反核9の日座り込み」=6月9日、長崎市の平和公園

NIF問題
水爆開発につながる―原 水 禁
“核爆発”当たらない―HOYA

今年二月、米国の核兵器研究所ローレンス・リバモア研究所のレーザー核融合実験施設、国立点火施設(NIF)に、ガラス大手のHOYA(本社東京)の現地法人が、レーザー光線増幅用特殊ガラスを納入していることが明るみに出た。

日系企業が核関係施設の中核部品を大量に受注、製造していた事実は、被爆地にショックを与えた。原水爆禁止国民会議(原水禁)から「NIFは新たな核兵器開発が目的」と抗議を受けた同社は、「事実確認のため」出荷を中断したが、三月末に再開の方針を表明。併せて、この問題に関する「見解」を出した。

そこでは、▽NIFが一翼を担う米国の核兵器維持管理計画(SSP)は、核削減に向け現有核を放置する危険を避け、安全性、信頼性、性能を確認する目的▽NIFの実験は包括的核実験禁止条約(CTBT)が言う核爆発に当たらないというのが国際常識。日本政府もその立場を採っている―などと主張した。

これに対し原水禁は、▽NIFの任務は新しい水爆の設計とそのための研究者の維持▽NIFは微小規模だが核融合爆発を実現する。核分裂反応を伴わない臨界前核実験よりも悪質―と反論している。

長崎、広島両市長も同社に納入中止を要請。伊藤長崎市長は抗議文の中でNIFの研究を「臨界前実験と同様に、まさに核兵器を持ち続けようとする米国の核政策の表れ」と批判。SSPの内容やCTBT違反か否かにかかわらず、核兵器維持体制そのものと、そこでの日系企業の関与を問題視した。

HOYA側は「社の考えは公表した『見解』がすべて。(批判に対する答えは)見解から読み取ってほしい」(同社総務部)との姿勢を崩していない。一方、原水禁は、来月の原水禁大会でこの問題も取り上げ、同社への圧力を強める構えだ。

N I F
米国立点火施設(National Ignition Facility)。ガラスレーザーによる核融合実験を目的に、米カリフォルニア州のローレンス・リバモア研究所の敷地内で、数年後の完成を目指し建設中。