原爆投下の正当性などを主張する米国人からのメッセージを前に思いを語る森口貢さん=長崎市内

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核を見詰める 県内留学生アンケートから【2】 核抑止 依存か脱却か 割れる

2018/07/24 掲載

原爆投下の正当性などを主張する米国人からのメッセージを前に思いを語る森口貢さん=長崎市内

核抑止 依存か脱却か 割れる

 
 -今後、世界で核軍縮は進むと思いますか。(回答した留学生212人)
 ▽思う 53・3%
 「誰も非人道的なものは望まない。信じ続けたい」(台湾の28歳男性・長崎ウエスレヤン大)、「各国の指導者に十分な共感性さえあれば可能だ」(フィリピンの26歳女性・長崎大)
 ▽思わない 18・4%
 「核が国の優位を保証するという考えもある」(シリアの28歳男性・長崎大)
 「核軍縮に期待するが、米国やロシア、北朝鮮の動きが予測できない」(オランダの20歳女性・長崎大)
 ▽どちらともいえない 21・7%
 ▽無回答・不明 6・6%
     ◇
 アンケートでは核抑止に頼るのか、脱却すべきかで意見が割れた。核保有国と日本など「核の傘」に依存する国、対する非保有国との対立の縮図ともいえる。
 長崎市で被爆した「長崎の証言の会」事務局長の森口貢さん(81)も今年それを再認識した一人だ。
 3月、米反核団体の招きを受け長崎原爆用プルトニウムが製造されたワシントン州ハンフォードの近郊を訪ねると「アトミック」という名の飲食店の看板や原子雲を描いた高校の校章など「原子力の誇示」を目にした。
 大学で原爆で親族を失ったことを講話し核廃絶を訴えると、その様子を現地紙で知った米国人男性からこう記されたメッセージが届いた。「あなたの苦しみには心から同情する」。ただ「日本が早く降伏していればきのこ雲はなかった」。
 「核が平和をもたらしたという考えはまだ根強い」。森口さんは怒りとともに無念さを感じている。
 日本は原爆により降伏したとの考えは根強いが、異論を唱える核軍縮専門家もいる。「核兵器をめぐる5つの神話」(RECNA叢書)の著者ウォード・ウィルソン氏は長崎原爆投下直前の旧ソ連参戦が降伏の最大の要因と分析。核戦争寸前だったキューバ危機などの検証を基に核抑止の実効性にも疑問を投げかけている。
 核の存在価値には賛否あるが「今はまだ核で世界秩序が成り立っている」。核軍縮について議論する外務省主催「賢人会議」の国内外のメンバー16人の一人、朝長万左男・日赤長崎原爆病院名誉院長(75)はこう指摘し、核に頼らない世界秩序の構築が必要とする。
 核拡散防止条約(NPT)体制下で核軍縮は停滞し、核兵器禁止条約を巡る対立も深まる中、賢人会議は3月、核保有国と非保有国の「橋渡し役」が必要と訴える提言を河野太郎外相に渡した。今後、政府の具体的な行動が問われてくる。
 朝長氏は「何より各国の信頼醸成と対話が大事」と強調。新たに「核の傘」依存国や非保有国などが被爆地に集まり核軍縮会議を開くことを提唱し、朝鮮半島と日本を含む「北東アジア非核兵器地帯構想」の議論進展にも期待している。