英語での被爆証言に挑戦している松本さん(右)と、学校で平和学習を展開している光岡さんのコラージュ

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核を見詰める 県内留学生アンケートから【1】 継承 実体験者の証言に重み

2018/07/24 掲載

英語での被爆証言に挑戦している松本さん(右)と、学校で平和学習を展開している光岡さんのコラージュ

継承 実体験者の証言に重み

 
 -被爆者(深堀讓治さん)の体験講話を聞いて、核兵器を廃絶すべきという思いは強くなりましたか。(回答した留学生211人)
 ▽なった 72・5%
 「辛い体験を聞き何かすべきという思いが強まった」(中国の女性・活水女子大)、「私たちは戦争をせず世界市民として一緒に生きていける」(イタリアの23歳女性・長崎大)、「核廃絶は国際関係強化のためにも極めて重要」(米国の20歳女性・長崎外国語大)
 ▽ならなかった 6・6%
 「とても心を動かされたが、核廃絶は非現実的だとも思っている」(米国の男性・長崎外国語大)
 ▽どちらともいえない 13・7%
 ▽無回答・不明 7・1%
     ◇
 被爆の実相と核廃絶を長年、世界に訴えた長崎の被爆者、故・山口仙二さんや故・谷口稜曄(すみてる)さんらを思い返しても、実体験者の証言には何ものにも代え難い重みがあることをアンケートは改めて裏付けている。日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の田中熙巳(てるみ)代表委員(86)は「被爆者が核の恐ろしさを伝え続けた成果の一つが昨年の核兵器禁止条約の採択だ」と話す。
 原爆の記憶を語り継ぐことは今後も核廃絶を訴える基礎となる。こうした中、長崎平和推進協会継承部会で語り部活動をしている松本美都恵さん(76)=長崎市=は「外国人に外国語で直接話せば思いはより伝わる。通訳を介さない分、時間に余裕も出る」と考え、英語で話す練習も始めた。
 3歳の時、爆心地から4キロで母におんぶされ、その肩越しに見た閃光(せんこう)、戦後の貧困などの体験記を、長崎平和推進協会の協力を得て6月末に英訳した。まだ原稿なしで話せるレベルに至っていないが、ひとまず1年後の実践が目標だ。被爆者の平均年齢は82歳を超えたが、松本さんはその中では若い方。「あと10年は活動できる」と前を見る。
 一方“被爆者なき時代”を見据えた動きもある。県内外の小、中学校などで出前の平和講座を展開する「ピースキャラバン隊」が昨年、県内学生有志で結成された。代表の光岡華子さん(22)=長崎大教育学部4年=は「実体験がない私たちが被爆者の証言を伝えようとすると、原稿を読むだけのようになってしまう」と課題を挙げ、自分なりの方法で核廃絶に向き合っている。
 「なぜ核兵器がまだ存在しているのか。隣の人と話し合ってください」。7月中旬、光岡さんらメンバー4人は諫早市の中学校体育館で生徒らに呼び掛けた。講座の分量の内訳は「原爆を巡る過去」と「現在の核情勢」とで「1対3」。当事者意識を持ってもらうため議論の場も設けている。
 「若い世代で平和学習の専門家を増やし県内外にネットワークを広げたい」と光岡さん。記憶の継承と核廃絶へ時代に合った方策とは-。模索は続いている。
     ◇
 「原爆・平和」に関する県内留学生214人へのアンケート結果を手掛かりに、核を巡る「継承」「核抑止」「機運」を考える。