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佐世保と安全保障 半島有事への備え④ 難民問題 水際対策 具体化進まず

2018/03/30 掲載

難民問題 水際対策 具体化進まず

 
 1999年3月。能登半島沖の日本海。領海侵犯した北朝鮮の工作船に対し、自衛隊は初の海上警備行動を発令した。海上自衛隊は護衛艦などで追跡したが逃走を阻止できなかった。
 この事件を教訓に2003年、海自佐世保警備隊に不審船対処を目的とするミサイル艇が配備された。現在、北海道・余市、京都・舞鶴、佐世保の3カ所で計6隻に上る。
 佐世保は200トン級の「おおたか」「しらたか」の2隻体制で、対馬を含めた九州沿岸に目を光らせる。最高速度は44ノット。小回りが利き、素早く展開できることが特長だ。本年度は警戒監視のため8回出港した。ただ「出動実績は公表された数字より多い」(海自佐世保地方総監部)。2隻を運用する第3ミサイル艇隊は「少人数だが、警戒監視など任務上での権限は護衛艦と同等だ」と強調する。
 対馬には対馬海上保安部と比田勝海上保安署があり、巡視艇と巡視船計6隻体制で沿岸の警戒に当たる。主な任務は密漁船の取り締まりだが、比田勝海保の幸田守十署長は言う。「乗組員らは国境の警備を担っている意識は強い」
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 こうして海上自衛隊と海上保安庁は平時から海上での警戒監視を続ける。しかし朝鮮半島で有事となれば、対馬に大量の難民が押し寄せる懸念がある。武装難民が紛れている可能性も否定できない。
 対馬には歩兵部隊を中心とする陸上自衛隊対馬警備隊が配置されている。「海自、空自の警戒監視の“網の目”をくぐり抜けて上陸を試みる相手を、最終的に阻止するのが陸自の役割だ」。ある陸自OBは説明する。実動部隊の人数は明らかにしないが、南北に広い対馬の地形を踏まえ、こう付け加える。「対馬警備隊だけでは人員はとうてい足りない」。水際対策の重要性を強調する。
 島内からも水際対策を念頭に防衛力強化を求める声がある。対馬自衛隊友の会の眞崎龍介会長(66)は、海自の護衛艦が寄港できるよう比田勝港の整備を求めてきた。防衛相らも視察訪問。しかし「港が手狭」などの理由から、具体的な進展はないままだ。
 眞崎会長は「北朝鮮の動きをきっかけに、国境の島を守るための具体的な手だてを考えておく必要があるのではないか」。言葉にはもどかしさがにじむ。