手記「閃光の影で」を手にする加藤館長=ミライon図書館
被爆体験を継承するため図書館は何をすべきか-。大村市東本町のミライon図書館(加藤盛彦館長)は今月、映画「長崎-閃光(せんこう)の影で-」の上映会を実施するとともに、基となった手記集の簡易デジタル版を制作した。被爆県の“知の拠点”として、映像と文章の両面から実相を伝える活動を模索している。
映画は昨年公開。日本赤十字社県支部が1980年に発行した「閃光の影で-原爆被爆者救護赤十字看護婦の手記-」を基に、原爆投下直後の長崎で被爆者の救護に当たった看護学生たちを描いた。
「映画はドキュメンタリーのような臨場感と迫力があった」。加藤館長は映画を鑑賞後、手記を読み込んだ。「映像と文字が重なり、長崎で起こったことをより深くイメージできた」と話す。
手記の原本は県立長崎図書館郷土資料センター(長崎市)が2冊、日赤県支部が数冊を所蔵している。国立国会図書館には在庫がなく、貴重な資料だ。ミライon図書館は映画のエピソードと重なりが感じられる手記の一部を抜粋し、簡易版を作成した。
抜粋した手記には、例えば次のような描写がある。
「わが子をしっかりと抱きしめ眠ったままの姿で死んでいる母親、その母親の乳房にむしゃぶりつき、泣きじゃくっている乳児、死んだ者が苦しかったか、生きている者が苦しいのか」
この文章をほうふつさせる場面など、映画には印象的なシーンが数多く登場する。「手記は実際に体験したことを淡々と記しているからこそ、その分事実を肌で感じられる」と加藤館長。教育現場で映画を活用する機会を見据え、その際に手記にも触れてもらおうと、簡易版のウェブ公開に踏み切った。修学旅行で長崎を訪れる県外の学校などでも読めるようになった。
今月8日にはミライon図書館で映画の上映会を実施。参加者には簡易版を印刷した紙を配布した。参加者からは「手記は初めて目にした。知ることができてよかった」「作り話ではないことが分かり、覚悟を持って見た」などの感想が寄せられたという。
加藤館長は、文字資料だけでなく映像や音楽を組み合わせると裾野を広げることができると指摘。その上で「文字だからこそ膨らむ想像力をおろそかにしてはいけない。本には文章でしかたどり着けない深い世界がある」と語る。
あらゆる国・時代・立場の人と深く対話でき、膨大で質の高い情報が集まる場所-。加藤館長は図書館の魅力をこう語る。被爆者なき時代が迫る中、文章の力を見つめ直した今回の試み。「情報を語り継いでいくことは図書館の仕事」と未来を見据えた。
