「なぜ認められないのか…」 カネミ油症 五島の認定患者、子への判断に憤り

長崎新聞 2026/07/19 [11:00] 公開

わが子が未認定であることに複雑な思いを抱えながら油症検診を受ける岩村さん=五島市奈留町、市奈留離島開発総合センター

わが子が未認定であることに複雑な思いを抱えながら油症検診を受ける岩村さん=五島市奈留町、市奈留離島開発総合センター

大きい写真を見る
カネミ油症患者らの健康状態を調べる県内の本年度油症検診が17日、五島市奈留町を皮切りに始まった。同町の認定患者、岩村正勝さん(81)は、油症認定されていないわが子への複雑な思いも胸に、検診に臨んだ。

 岩村さんは油症事件が発覚した1968年当時、大工だった。近くに住む姉の家で食事をすることが多く、天ぷらなどに使われていた油がダイオキシン類などに汚染されていたとみられる。鼻の脇などに吹き出物が幾度もでき、「つぶしてもつぶしてもまたできる。体のかゆみやだるさも続いた」と振り返る。今も原因不明の頭痛や倦怠(けんたい)感に悩まされている。

 妻定子さんはカネミ油症被害者五島市の会副会長として患者救済に尽力したが、昨年3月に75歳で死去。一周忌が過ぎたが、「一日たりとも忘れたことはない。病気を抱えながら気丈に家庭を支えてくれた。思い出すと寂しい」と語る。

 50代の次男と40代の長女は、だるさなど油症に似た症状を訴えており、汚染油を摂取した親の体を通じて健康被害を受けたとみられるが未認定。生後間もなく亡くなった長男は後年、ダイオキシン類がへその緒から高濃度で検出されたが認定に至らなかった。「なぜ数値が出ているのに認められないのか」と憤る。

 全国の被害者らは診断基準の見直しや、被害者の子や孫ら次世代に特化した基準新設を国に求めているが実現していない。岩村さんは国に対して「妻が患者救済のために続けてきた活動や思いを無駄にしてほしくない」と話す。

 油症検診は全国油症治療研究班(事務局・九州大)の委託を受けた県が毎年実施。皮膚科や内科などの診察に加え、ダイオキシン類の血中濃度や骨密度、血圧などを調べる。未認定患者については検査結果などを基に総合的に判断し、知事が認定の可否を通知する。

 同日の検診は認定患者32人、未認定患者23人の計55人が受診。県内では、18日に同市福江総合福祉保健センター、31日に同市玉之浦支所、8月26日に出島メッセ長崎(長崎市)で実施する。問い合わせは県生活衛生課(電095・895・2362)。