夜間の急患搬送、移住者2人が挑戦 島唯一の海上タクシー事業者が廃業「誰かがやらないと」 長崎・五島

長崎新聞 2026/05/18 [11:40] 公開

「島のために、できる限りのことをしたい」と話す益子さん(右)と高野さん=五島市奈留町

「島のために、できる限りのことをしたい」と話す益子さん(右)と高野さん=五島市奈留町

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「島のために、できる限りのことをしたい」-。長崎県五島市の奈留島唯一の海上タクシー事業者が廃業し、島民の足や緊急搬送への影響が懸念されていた問題で、地域の安心を支えようと、県外からの移住者カップルが立ち上がった。6月から夜間の急患搬送に特化して運航を始める。

 新たにかじを握るのは、島で宿泊施設を営む益子一也さん(38)。パートナーの高野奏理さん(29)が陸上で運航を支え、二人三脚での挑戦となる。

 神奈川県出身の益子さんが奈留島に移住したのは8年前。フリーランスのプログラマーとして働く傍ら、趣味の釣りが高じて五島の海に魅せられた。建物を改装した宿泊施設を開業。プログラミングの仕事や漁業のほか、近年はカキの試験養殖など多彩ななりわいを経験しながら、島に根を張ってきた。

 こうした中、島で47年間営業を続けていた唯一の海上タクシー事業者が昨年11月末、高齢化などを理由に廃業。島民の間では後継者を求める声が上がっていたが、引き継ぎの話が浮かんでは消えた。事態は好転せず、島の窮状を見聞きするうちに「誰もしないのなら、引き受けたい」と決意を固めた。

 前の事業者から船を購入し、3月に一般不定期航路事業者として登録した。船の名は「CANARY(カナリー)」(9・7トン、旅客定員12人)。高野さんの名前「かなり」と、船体の黄色がカナリアを連想させることから命名。人命搬送という重みに向き合いながら、操船訓練を重ねてきた。

 岩手県出身の高野さんは、5年前に同市の地域おこし協力隊として来島。離島留学生の支援やガイド業などで島と深く関わってきた。パートナーの決断に「事故なく安全に運航できるよう支えたい」と前を向く。

 日中は仕事があるため、夜間の緊急搬送を主軸に置く。一方で、課題も。搬送だけでは経費の維持も難しく、深夜に呼び出される負担も避けられない。「収益モデルの構築を模索しながら続けるしかない。まず自分でやってみて、可能性を確かめたい」と益子さん。

 奈留島の人口は約1700人。市も新たな緊急搬送船の建造を模索しているが、態勢が整うまでの間、島民の命をつなぐ重責。「誰かがやらないと」-。2人の表情に決意がにじむ。