月1万円で居場所を 雲仙・国見活性化へレンタル部屋 福岡の不動産業・吉浦さん

長崎新聞 2025/08/29 [11:55] 公開

9月から部屋を貸し出す建物を案内する吉浦さん=雲仙市国見町

9月から部屋を貸し出す建物を案内する吉浦さん=雲仙市国見町

  • 9月から部屋を貸し出す建物を案内する吉浦さん=雲仙市国見町
  • 9月から貸し出す和室タイプの部屋
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月1万円で居場所をつくりませんか-。長崎県雲仙市国見町の空き部屋を貸し出し、借り主が自分好みに改修する企画を、同町にゆかりのある福岡市の不動産業、吉浦隆紀さん(48)が9月から始める。「国見は島原半島のハブ(結節点)になれる。交流人口を増やして地域を活性化させたい」とホームページで全国に利用を呼びかける。

 吉浦さんは不動産業に携わる中、人口減少が進み、住む人がいない建物や部屋が増え続ける地方の現状を目にしてきた。だが更地にしたり建て替えたりすると、その土地に根付いた建物の歴史や愛着が消えてしまいかねない。改修にも費用がかかるため、家賃が月5万円以上になり借り手がつきにくい。

 そこで吉浦さんは「借りた人が自分で改修すればいい。愛着も増すのでは」と考え、月1万円(光熱水費込み)で部屋を貸し出し、借り主がDIY(日曜大工)でリノベーションすることを企画。1万円札の肖像画となった渋沢栄一にあやかって「渋沢プロジェクト」と名付けた。

 工具を無料で貸して材料費を補助。希望や予算に合わせてノウハウもアドバイスする。昨年7月、第1弾として北九州市内にある築74年の団地24室で開始。3カ月で満室になった。第2弾を今年3月に大牟田市の元ホテルで始め、国見町は第3弾となる。

 国見町とのつながりは、同町出身の歩さん(46)と5年前に結婚したのがきっかけ。一緒に帰省する機会が増え、地域活性化になればと、築50年ほどの屋上付き木造・鉄筋混構2階建てを2年前に購入した。

 約10年前に閉店した電器店「キタモリデンキ」があった建物で、建築当初は旅館だった。島原鉄道多比良駅から徒歩2分、熊本県長洲港と多比良港を結ぶ有明フェリーの多比良港から同7分と、好立地だ。

 プロジェクトの対象は2階の8畳6部屋。共用の風呂場とトイレ、キッチンがある。家賃1万円は最初の1年間限定。1階の約155平方メートルはプロジェクトとは別にレンタルスペースにする。

 吉浦さんによると、福岡市中心部から国見町までは鉄道やフェリーを乗り継いで約2時間半。「温泉地に近く、自然豊かな国見のポテンシャルは高い」と分析する。「多比良港から歩いて商店街を散策し、通りを歩くおばあちゃんとあいさつを交わしてのんびりしたら、テーマパークよりもずっと安く非日常を味わえる」と、都心や海外からの来訪者増を見据える。

 2拠点生活だけではない。仲間と集まる場に、趣味の教室に、アコースティック演奏の発表に-。借りた人が自由に使って、「自分の夢にチャレンジしてほしい」。夢を持つ誰かの背中を押すという夢を、朗らかに語った。