働く女性 自分らしく生きる力に 長崎の時短家事コーディネーター 「こうあるべき」は捨てて

長崎新聞 2025/05/26 [10:50] 公開

「働く女性の力になりたい」と話す田中さん=長崎市内の自宅

「働く女性の力になりたい」と話す田中さん=長崎市内の自宅

  • 「働く女性の力になりたい」と話す田中さん=長崎市内の自宅
  • 田中さんが紹介している便利グッズ。多機能ハンガーやみじん切り器、汚れを落としやすいクロスなど
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働く女性や共働き世帯が増え、家庭で過ごす時間が限られる中、効率的な「時短家事」が注目されている。「負担を軽減し、働く女性が自分らしい生き方、暮らし方ができるよう力になりたい」。長崎市の時短家事コーディネーター、田中亜希子さん(51)は転勤族だったかつての自分と重ねながら、整理収納や時短家事をアドバイスする「Mam-Aid」(ママエイド)を昨年開業し、働くママたちを応援している。

 千葉県出身の田中さんは1994年に東京の短大を出て大手保険会社に入社。2008年に同僚の歩さん(44)と結婚した。歩さんの転勤に伴って11年に山口県、16年に長崎市へと引っ越し、その間、長男(13)と次男(8)が生まれた。

 会社のIターン制度を利用して育休終了後に現地の支店でそれぞれ復職したが、21年4月に歩さんが愛知県に転勤。「ワンオペ家事・育児」の日々が始まり、「(子どもを一時的に預かる)ファミリー・サポート・センターのヘビーユーザーだった」と振り返る。

 一方、育休中に整理収納アドバイザーの古堅純子さんの本に出合い、自宅の片付けに関心が向き、効率的な家事を実践。ママ友や会社の子育て中の後輩と話す中、仕事と家事・育児の両立に悩む声もよく聞いた。

 21年9月に田中さん自身も愛知県に転勤し、「ワンオペ」の日々が終わったが、転機が訪れる。コロナ禍での転校で、小学生だった長男が「長崎に帰りたい」と訴えた。長崎は多くの友人と思い出ができ、大好きな場所ではあるが、転勤族にとっては現実的に難しい選択。だが子どもの切実な願いをかなえたい。田中さんは23年、50歳を期に早期退職することを決断する。

 歩さんを愛知県に残し、23年夏、子ども2人と長崎市に移住。「第二の人生。次の新しい自分を目指したい」。そこで「経験を生かし、訪問型の片付けの先生として、働くママを応援したい」と個人事業主として開業することを決意し、同アドバイザーの資格を取った。

 24年1月に「Mam-Aid」を開業。時短家事コーディネーターの上級ライセンスも取得した。自宅訪問による片付けサポートのほか、企業向けのセミナーも開催。今年4月には長崎市内の商業施設主催で一般向けに「時短家事講座」も開いた。

 その中で便利グッズやスキルを紹介しながら、必ず伝える「5カ条」がある。▽固定観念を捨てる▽1人だけで頑張らない▽自分を褒め、周囲に感謝▽悩まない仕組みをつくる▽サービスや家電に頼る-。

 「時短家事は手を抜くことではなく、自分らしく暮らすための時間効率を目的に考えられたメソッド。『こうあるべき』は捨てて、自分らしい生き方を」。明るい笑顔できょうも元気と幸せを届ける。