過疎地の「健康難民」救いたい! 空き家でジム展開するトレーナー「誰かがやらないと」 長崎・南島原

長崎新聞 2026/02/10 [12:30] 公開

太田さん(右)の指導の下、筋力トレーニングに励む高齢者。築70年の空き家をジムに再生した=南島原市口之津町

太田さん(右)の指導の下、筋力トレーニングに励む高齢者。築70年の空き家をジムに再生した=南島原市口之津町

大きい写真を見る
長崎県南島原市のフィットネスジムのトレーナー、太田祥平さん(53)が空き家を再生した「健康拠点」づくりに取り組んでいる。採算性の問題で大手ジムが進出しづらい過疎地での挑戦。太田さんは「過疎地の健康格差をなくし、健康対策をしたくてもできなかった『健康難民』の方を1人でも多く救いたい」と語り、他地区への広がりを期待する。

 東京の出版社で美容や健康に関する雑誌の編集者として働いていた太田さん。当時通っていた都内のジムには多くの元気な高齢者たちがいた。その光景を前に思い出したのが、30年ほど寝たきりで過ごし「外を歩きたい」という夢をかなえられずに亡くなった祖母の姿。「田舎でもこんな場所が増えればいいのに」。その思いが活動の原点だ。

 8年前、10万人当たりの要介護・要支援認定者が多いことなどを条件に、健康拠点が求められている地域を全国で探し始めた。すると、島原半島が条件に該当。故郷の南島原市加津佐町を挑戦の場所に選んだ。ただ、一からジムを新設すると数千万円がかかると試算。そこで各地で社会問題化している空き家に目を付けた。

 開業コストを抑えるため、空き家を活用し、最低限の改修を実施。空き家は知人の紹介で見つけ、改修には市の補助金も活用した。床は張り替えたが、重い機器を置くと抜けてしまう危険性もある。そこで、問題ない重さの器具を用いて、週2回の運動で効率よく筋力アップできるメニューを開発。5年の準備期間を経て、3年前に同町で開業した。

 現在は加津佐町から移り、同市の口之津町と南有馬町、佐賀県太良町の3か所でジム「ZUTTOWAKAI」を展開。いずれも空き家を活動の場として再生した。都市部では無人ジムが増えているが、機器に不慣れな高齢者が継続しやすいように直接指導の形を取っている。

 1月下旬、口之津町のジムを訪ねた。海岸沿いの住宅地にある一軒家。玄関の引き戸を開けると、広々とした室内で7人の高齢者が元気に筋力トレーニングに励んでいた。通っている女性(83)は「家の近くにあるから続けられる。地域の空き家が減り、安心にもつながる」と感謝。週2回の“井戸端会議”の場にもなっているという。

 採算面での厳しさは否めないが「誰かがやらなければ健康格差は広がるばかり」。太田さんは空き家問題と健康格差の解消に一石を投じる思いで続ける。取り組みを推進するため、関心を持った自治体関係者やトレーナーら“仲間”を募集中。空き家ジムの運営や運動方法のノウハウは共有するとしている。