医療費支給に懸念の声…政府米の保管料が原資、備蓄米の放出を受け カネミ油症被害者の救済を巡り3者協議

長崎新聞 2025/06/16 [10:00] 公開

国、カネミ倉庫、被害者団体が意見交換した3者協議=福岡市内

国、カネミ倉庫、被害者団体が意見交換した3者協議=福岡市内

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カネミ油症被害者の救済を巡り、被害者団体と国、原因企業カネミ倉庫(北九州市)による3者協議が14日、福岡市内で開かれた。油症認定患者の医療費は、カネミ倉庫が政府米の保管料などを原資に支給しているが、被害者側は政府が米不足で備蓄米を放出したことを踏まえ、「保管料が減れば医療費の支給が滞るのでは」と懸念を表明。油症における医療補償制度の不安定さが浮き彫りとなった。
 カネミ倉庫は「当社が扱うのは主食用備蓄米ではなく、MA(ミニマムアクセス=最低輸入量)米であり、現時点で収入への影響はない」。農林水産省は、国際約束に基づいて輸入される加工用・飼料用がMA米で、近年需要が高まっていると説明。「市場動向によっては今後影響が出る可能性もある」としながらも、「保管水準の維持に努めたい」との姿勢を示した。
 国からカネミ倉庫への保管料の支払額は2024年度で約2億円。被害者側は「支払額は年々減少している。19年度の水準(約2億3100万円)に戻してほしい」と求めた上で、「安定的に継続するためには、国が備蓄米の確保に責任を持ってほしい」と訴えた。
 また、これまでの3者協議で被害者側は、油症認定の可否を判断する「診定委員会」との懇談を求めてきた。厚生労働省は今後、被害者側から質問事項の提出を受け、懇談するかどうかを全国油症治療研究班と協議することにした。
 3者協議後の被害者側の記者会見では、被害者の子や孫ら次世代の救済を訴えてきた五島市の認定患者、故岩村定子さん(3月に75歳で死去)について「無念だったろう」などと惜しむ声が相次ぎ、次世代救済が遅々として進まない状況にいらだちを募らせた。