宇久島で最期迎えたくても 島唯一の特養が閉所 経営悪化、人材不足…法改正求める声も 佐世保

長崎新聞 2026/05/29 [11:00] 公開

母のアイ子さん(左)に新しい施設の居心地を尋ねる吉男さん=佐世保市、ショートステイ りんどう

母のアイ子さん(左)に新しい施設の居心地を尋ねる吉男さん=佐世保市、ショートステイ りんどう

  • 母のアイ子さん(左)に新しい施設の居心地を尋ねる吉男さん=佐世保市、ショートステイ りんどう
  • 5月末で閉所する特別養護老人ホーム「啓寿園」=佐世保市宇久町
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長崎県佐世保市宇久島唯一の特別養護老人ホーム「啓寿園」(宇久町)が経営難で5月末で閉所する。入所者29人のうち27人は島外の施設へ移った。市は代替の宿泊サービスを提供する予定だが、人材は確保できていない。島民は「人口減少が加速する」と危惧し、市議からは有人国境離島法改正による支援を求める声も上がる。

■ついのすみか
 4月27日朝、啓寿園に入所していた宮﨑アイ子さん(94)は本土の施設「ショートステイ りんどう」(同市花園町)に移った。認知症の症状があり、長男吉男さん(73)は真新しい施設を笑顔で眺める母親を見て「島に戻れないことを理解しているのだろうか」と複雑な心境になった。
 啓寿園の入所者のうち島に残ったのは吉男さんの妻の母親など2人。吉男さん自身は近い将来、島外にいる息子の世話になるかもしれないと思う。島の人口は約1600人。「宇久島はもう、多くの人にとってついのすみかとなり得ない」

■運営の難しさ
 啓寿園を運営する社会福祉法人福壽会(宇久町)によると、経営悪化の原因は入所者の減少と職員不足。定員40人に対し、2019年度の平均利用実績は39・3人だったが、新型コロナウイルス禍以降の23年度は32・7人まで落ち込んだ。翌24年度は回復したが、利用者が亡くなるなどして25年度は34・7人と減った。
 介護人材不足も追い打ちになっている。15年4月以降、島内から啓寿園に就職した人はゼロ。21年1月から外国人材を受け入れ始めたが、寮の建設などで経費が膨らみ21年度から赤字に。今年3月、慢性的な赤字を理由に市に閉所を伝えた。
 特別養護老人ホームの経営について市内の社会福祉法人関係者は「常に満床でなければ赤字に転落してしまいがちだ」と指摘。利用料と介護報酬は介護保険制度で定められており、物価高騰が経営を圧迫。働き手は民間に比べ待遇がいい社会福祉協議会へ流出し、採用活動や求人広告費なども負担になっているという。

■有人国境離島
 市は今月、緊急措置として3千万円の補正予算を計上。島外へ移った入所者や面会に通う家族の渡航費を支援し、代替の宿泊サービスを提供する。ただ、運営に必要な5人の職員については市社協と「調整中」とし、サービス開始時期は未定だ。地元から入所機能存続の要望を受け、市は島内の福祉施設や学校の給食調理員など人材や機能を集約し、効率的なサービス提供体制を検討するとしているが、展望は描けていない。
 こうした状況を受け、市議の1人は有人国境離島法の介護福祉分野への応用を訴える。同法は航路・航空路の運賃低廉化や雇用拡充、観光促進などを柱とするが、「国境の島の人口減への手だてが足りていない。改正を国に強く要請すべき」と主張する。
 吉男さんは行政の支援に感謝しつつ、こうも思う。「佐世保市にとって、宇久島はどんな存在なのだろう」