メタバース活用に注力 長崎のIT企業アドミン 3DCG「本社ビル」建設、完全リモート化

2023/02/17 [12:20] 公開

メタバース上に建設したアドミン本社ビルの外観(同社提供)

 長崎市のIT企業「アドミン」(山口知宏代表取締役)が、インターネット上の仮想空間「メタバース」の活用に力を入れている。バーチャルオフィスを用いた業務効率化に加え、今後の成長分野と位置付け、次世代のプラットフォームサービスの開発に向けた研究も進めている。
 アドミンは、2020年からデジタル技術を用いて業態を抜本的に改革する「サイバー企業」への転換を打ち出し、デジタルトランスフォーメーション(DX)を強力に進めている。全国に先駆けてオフィスのキャッシュレス化、ペーパーレス化、業務自動化技術RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を積極的に取り入れてきた。
 メタバースもその一環。メタバースプラットフォーム「ギャザータウン」にバーチャルオフィスを開設し、社員約20人の完全リモートワーク化を実現した。さらに別のプラットフォーム「ディセントラランド」には「土地」を購入し、3DCGの「本社ビル」を建設。国内初の「メタバース上に本社を移した企業」としてPRしている。

メタバースプラットフォーム「ギャザータウン」を通じて社員と会話する山口代表=長崎市古町

 ディセントラランドは、ネット上の取引履歴を暗号化し、鎖のようにつないで維持する「ブロックチェーン(BC)」技術を用いたプラットフォーム。BCは改ざんやシステム障害に強く、仮想空間上での売買取引や承認制担保などに適している。このため、メタバースのビジネス利用の可能性が期待されている。
 山口代表は、次世代のインターネット社会について「情報の交換から価値の交換へ進化していく」とし、BC型メタバースが今後の基盤となると予測する。メタバース上に日本列島を再現し、ビジネスやレジャーを完結できる日本人向けプラットフォームの開発を目指している。「メタバース上では、人間とAI(人工知能)、RPAが共存して働くことができ、飛躍的に生産性が上がる」と「未来の職場」を思い描く。
 当面はギャザータウンを通常業務、ディセントラランドをメタバース活用のデモンストレーションの場として活用する方針。日本円と連動した仮想通貨を扱う企業「JPYC」(東京)と業務提携し、現実とメタバースを仲介する決済機能やメタバース上の経済圏の構築を模索している。
 メタバースの普及には、ゴーグル型端末の軽量化や通信の高速化など複数の技術的な課題がある。ただ、山口代表はスマートフォンや会員制サイト(SNS)などを例に「今はイメージしづらくても、いくつかの技術革新で爆発的に普及する可能性がある」と強調。「最先端を走る企業として、人口減少などの地域課題解決を提案できるモデルケースとなりたい」と展望を語る。