砥石の劣化をAIが解析 佐世保高専の川下、坂口両教授 工作機械メーカーと装置開発

2023/01/19 [10:30] 公開

工作機械の前で開発した装置による砥石の表面画像を示しながら研究について語る川下教授(左)と坂口教授=佐世保市、佐世保高専

 佐世保高専(長崎県佐世保市沖新町)電子制御工学科の川下智幸教授と坂口彰浩教授が、工作物を削る砥石(といし)の表面の劣化状態を人工知能(AI)で解析する装置を、工作機械メーカー「ナガセインテグレックス」(岐阜県)と共同で開発した。
 開発した装置は、スマートフォンの部品の金型など精度の高さが求められる削作加工の工作機械に設置して、砥石の表面を“見える化”する「砥面観察装置 GRIDE EYE」。カメラや画像解析ソフトなどを搭載し、モニターなどで砥石の状態が確認できる。

工作機械の砥石部分。装置はAIを活用してその表面の劣化状態を解析する

 砥石の劣化の確認は、技術者の経験や勘に頼っていた部分が多いが、装置では砥石の表面にあるダイヤモンドなどの砥粒の作業工程における画像をAIに認識させ、砥粒がつぶれているなど、劣化具合を解析して数値化。砥石を元の状態に整えるドレッシングという作業のタイミングを自動的に判断する。
 川下教授らはカメラのデジタル化に伴う画像技術の進化を見据え、約20年ほど前から研究を進めていた。「熟練技術者の高齢化に伴う技術の消失を防ぎ、加工精度を保つことができる」と意義を語る。

 装置は昨年11月に東京で開催された日本国際工作機械見本市で発表され、世界的に見て初めての計測システム技術として注目されている。同社は今年3月に商品化する。
 この装置のさらなる展開として、シリコンなど半導体の切断作業における研削加工分野での活用も期待される。川下、坂口両教授は「職人の感覚をAIに結びつける。長崎でもいろんな発想でオンリーワンの研究ができる」と話している。