石木ダム「意見を聞く場」 住民の思いさまざま 長崎県川棚町

長崎新聞 2026/08/22 [11:40] 公開

関係住民の意見の一部

関係住民の意見の一部

  • 関係住民の意見の一部
  • 「意見を聞く場」が開かれた木場郷公民館=川棚町
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7月から始まった石木ダム建設事業の在り方を巡る平田研知事の「意見を聞く場」は、長崎県東彼川棚町の地元関係住民への聞き取りに入った。ダム建設予定地上流に位置する木場地区住民は地区の分裂が再び起きないようくぎを刺し、建設予定地から移転した住民は早期完成を強く望んだ。主な意見をまとめた。

◎木場住民 分裂「絶対いけない」

 木場地区には40世帯が暮らす。18日に非公開であった「意見を聞く場」には22人が出席した。出席者や県が21日に公表した議事録によると、住民は、水没予定地の川原地区住民同様、ダム問題に翻弄(ほんろう)されてきた地区の歴史を踏まえ「地域住民の分裂は二度とあってはならない」「将来に禍根を残さないためにも慎重な判断をお願いしたい」と訴えた。
 木場地区の住民は1982年の県の強制測量の際、測量容認派と反対派に分かれ対立。それまで互いに協力してきた葬式や結婚式、法事などで「呼ばない」「行かない」との状況をもたらし、相互扶助の慣習が途絶えた歴史を持つ。2000年代初頭に関係は修復した。
 「聞く場」では、住民が隣接する川原地区の住民と交流があることに触れ「(木場の住民はダムについて)言わない方が差し障りがないと考えていると思う」と打ち明けた。別の住民はダム建設が「生涯をかけてダム問題と闘っている人の犠牲の上でできること」とし、「本当に必要なら誠意を持って(ダムの必要性を)伝えないと今の膠着(こうちゃく)状態がずっと続く」と指摘した。
 また、佐世保市の水需要予測の妥当性に疑問を抱き「ダムは見直すべきだ」という声や、これまでの強制測量などを踏まえ「強制してまでする必要はないんじゃないか」との意見もあった。ダム整備の有無にかかわらず、生活道路になる付け替え県道の整備工事を確実に進めることも要望された。
 平田知事が事業に対する県の姿勢を尋ねる場面もあり、住民は「(過去にあった)上から目線のような姿勢が亀裂を大きくし、尾を引いている」と語った。
 現職知事と住民の正式な面会はこの20年なかった。会合終了後、住民の一人は「話し合いをして、知事の回答が聞きたい」と、意見を伝えるだけの場に物足りなさを覚えたという。別の住民は「今でこそ(地区は)まとまっているが、心の底ではお互い思うところがある」と心情を吐き出した。

◎移転住民 早期完成「強く望む」 出席辞退、要望書提出

 平田知事側は建設予定地から移転した住民にも「意見を聞く場」の開催を打診したが、移転住民側は出席を辞退した。意見聴取の代わりに7月29日付で要望書を提出した。「一日も早く工事に着手し、石木ダムの早期完成を強く望む」と訴える内容だ。
 建設予定地の地権者で家屋移転を伴うのは67世帯。このうち約8割の54世帯が用地買収に応じ、ダム下流や町外に移った。移転住民は「石木ダム地域住民の会」をつくっており、要望書はこの会が提出した。
 要望書では「当初、全員が強い意思を持って(建設に)反対していた」と主張した。佐世保市の水不足を知り、川棚川下流の町民を水害から守るためにも「必要なダム」だと考え、用地買収などの補償交渉に「苦渋の決断」で応じたと記した。
 移転から長い年月がたっても本格的な本体工事まで進んでいない状況にも言及。「本当にダムはできるのか、私たちの決断は何だったのか」とやりきれなさを示し「提供した土地が無駄にならないように」と早期完成を求めた。