物価高騰で入札不落? 佐々町の新庁舎建設 他の大型事業も懸念

2022/10/16 [11:15] 公開

佐々町の新庁舎の外観イメージ(遠藤克彦建築研究所提供)

 北松佐々町の新庁舎建設で、8月に実施した入札が不落となった。町は、今後の再入札や完成時期への影響など詳しい情報を明らかにしていない。長崎県外の自治体では、物価高騰による入札不調などが起きているが同町の原因はどうなのか。現状を探った。
 同町の新庁舎は敷地内にある町文化会館前の駐車場に建設を予定している。2024年度の供用開始を目指し今年3月末に設計を完了。8月22日に一般競争入札を行い、五つの共同企業体(JV)が参加したが4JVが超過、1JVが辞退で不落となった。
 設計を担当した遠藤克彦建築研究所(東京)の担当者は取材に対し「(設計完了時の)見積もりは適正だったと考えている」と回答。その上で「入札実施の公告はいつになるのだろうか-と気になっていた」と話す。
 県内では、東彼波佐見町も新庁舎建設を計画しており、今年3月末に設計を完了。5月20日に入札を行い、落札業者が決まった。同町の担当者は「昨今の価格高騰に関係なく、そもそも価格変動はある。早く(入札には)出したいと考えてやるもの」と語る。
 佐々町庁舎建設室は経緯や今後の見通しについて「調査中」などとして明らかにしていないが、同町の複数の関係者は「価格高騰が不落の原因ではないか」と推測、「設計完了から入札までこんなに時間を空けて良かったのか」と疑問を投げかける。
 県外では、物価高騰などにより事業への影響が出ている。青森県野辺地町は2、3月に実施した新庁舎建設の入札が不落となり、6月に事業費の変更を発表。「建設・資材物価の上昇の速度が、公共建築工事の標準単価の改定より速かった」と理由を上げる。沖縄県糸満市の市立学校の移転改築事業では4月に設計が完了し、5、6月に入札をしたが、資材高騰の影響によって不調が続いた。設計を見直すという。
 佐々町では、ごみ焼却施設の改良や、し尿等前処理施設の建設など他にも大型事業が控える。物価高騰の行く末が読みづらい中、この二つの事業への動向にも関係者の注目が集まっている。