五島の“音風景”を楽曲に 佐世保出身のピアニスト 八坂さんら「感動を表現したい」

2022/08/20 [13:00] 公開

林の中で、虫や鳥の鳴き声などを確認する八坂さん(左)とゼミソンさん=五島市内

 カナダ・モントリオールを拠点に活動する長崎県佐世保市出身のピアニスト八坂公洋さん(37)と、カナダ出身の作曲家ダリル・ゼミソンさん(42)が、“五島の音風景”を取り入れた「サウンドスケープデザインプロジェクト」に取り組んでいる。7月下旬、五島市を訪れ、大自然や人々の生活の音を収録した。
 八坂さんは県立佐世保南高を卒業後、長崎大教育学部を経て、モントリオールの名門マギル大に編入。ピアノ科修士課程を修了した。近現代の楽曲を中心にレパートリーがあり、国内外で活躍している。
 サウンドスケープは「音の風景」を意味する造語。ゼミソンさんは、これまで京都や鎌倉の音をテーマにした作品を手がけ、4年前に八坂さんと出会った。
 九州大大学院芸術工学研究員助教のゼミソンさんが同僚から聞いた五島に関心を持ち、今回初めて八坂さんとコラボレーション。五島市のNPO法人BaRaKa(片岡優子代表理事)が主催する「五島海のシルクロード芸術祭」として実施する。カナダ政府出資の芸術支援団体の助成も受けている。本年度は、ゼミソンさんが4月から来年2月にかけ、五島列島の春夏秋冬の“音”を収録する。
 今回、八坂さんも同行し、7月22~25日に滞在。遣唐使の最後の寄港地だった三井楽町の海岸や、アコウの木が立つ玉之浦町の大山祇神社、大瀬崎灯台など13カ所で、波の音や漁船のエンジン音、鳥や虫の鳴き声、地中の振動音を専用の機材で拾い、映像を収めた。
 これらの音から、八坂さんが感覚をつかみ、即興で曲を当てて、一つの音楽を作り上げる。楽曲は60分で、五島を示す五つの楽章で構成する予定。五島市内で来年夏の発表を目指す。八坂さんは「もう曲のイメージが膨らんでいる。カナダでも披露したい」と話す。
 八坂さんは約15年ぶりの来島で「海の色や、水の透明度と、キラキラと輝いていた情景を鮮明に覚えている」、ゼミソンさんは「自然が神秘的だった」と感慨に浸った様子。二人は「五島の風景を体感でき、私たちの感動を表現する楽曲にしたい」と意気込みを語った。