全数把握見直しへ

2022/08/20 [11:00] 公開

 夕方になると、通信社の出稿案内のスピーカーからひっきりなしにこんな放送が流れてくる。〈○○県は△△△人の新型コロナ感染と公表済みの△人の取り下げを発表しました〉。取り下げの方はほぼ例外なくひと桁の数字だ。感染者数の「全数把握」が極めて精密に行われていることがよく分かる▲その全数把握を取りやめる検討が始まったのと同じタイミングで感染者の数が跳ね上がっているのは何だか皮肉に思える。全国の感染者数は2日連続で過去最多を更新した▲医療機関や保健所の負担が重いのだという。確かに、感染者数をきっちり把握するための連絡や集計に追われるあまり、感染者のケアや診療に手が回らないのでは本末転倒▲市民に行動の変容を呼びかけるための物差しとしての意味も近ごろは怪しい。ただ「公」の部類に属する仕事のやり方がなし崩しに変更されるのは少し気になる、と書きかけて▲ルールや決めごとがいつの間にか曖昧になったり、うやむやにされたりすることを指して「なし崩し」を使うのは誤用なのだ、と前にどこかで読んだことを思い出した。漢字で書くと「済し崩し」。元々は大きな借財を少しずつ返済することに由来する言葉▲状況を徐々に前進させ、好転させる-全数把握の見直しはその契機になるだろうか。(智)